そこでミヤジマさんは、もう一度彼女と面談を実施。
「○○さんなら絶対やれると思うんです。
何しろ、この工場に20年勤めていて、良いところも課題も、誰よりわかっているじゃないですか。みんなも、○○さんを信頼していて、『○○さんにリーダーをやってほしい』って言っていました。
実際、過去にOJTのやり方を見直すときも、○○さんの主導でうまくいったと聞きました。だからこそ、この工場がもっと働きやすい場所になるよう、一緒に改善に取り組んでほしいんです」
ミヤジマさんは、彼女がこれまでに築いてきた信頼や成果を具体的に伝え、「みんなのためにも貢献してほしい」という思いを伝えたのでした。
そうすると彼女は「いままでそんなふうに言ってくれる人はいなかったです。少し頑張ってみようと思います」とやる気を見せてくれたそうです。
おそらく、このとき彼女が感じたのは「わたしはできるかもしれない」「この人となら協力し合えそう」という前向きな感情。まさに「居場所」と「出番」を感じられた瞬間だったのだと思います。
「居場所」と「出番」が心理的安全性を生み出す
この「共同体感覚」は、現代のビジネスシーンで必要不可欠とされている「心理的安全性」にも通じる考え方です。
どちらも、組織やチームが大きな成果を生むには、お互いを尊重し助け合う関係、個人が自分の力を発揮できる環境が必要だという考え方です。
さきほどのミヤジマさんも、当初の勢いのまま「こっちのやり方が正しい」と強引に改革を進めていたら、ベテラン社員たちは反発するだけだったかもしれません。
でも実際は、
「ごめん、少し強引に進めすぎていた」
と素直に謝り、さらには、
「一緒に協力して欲しい」
と伝え、勇気を持って自ら不完全であることを認めたからこそ、相手の居場所と出番が整ったのです。
「ここなら自分らしくいられる」「この仲間たちのために役立ちたい」という居場所と出番を感じられる環境が整っていると、人や組織は成長する。
これこそが、豊かな人間関係を築き、不毛な付き合いをゼロにする鍵なのです。