「いままでの努力は意味がなかったというのか」
「自分たちの考えは聞いてもらえないのか」
そんな思いから、だんだんと「居場所」が失われていくように感じたのでしょう。
さらに、ミヤジマさんが「改革だ!」と張り切れば張り切るほど、「もう、自分たちにやれることはない」と、自分たちの「出番」までも奪われていくような気がしてしまったのかもしれません。
その結果、現場の社員たちはモチベーションを失い、「工場をよくしよう」というミヤジマさんの熱意を、どこか他人事のように白けた目で見てしまったのです。
「ここにいていい」と感じる場所はあるか?
「居場所」は、「ありのままでいい」とあなたが安心していられる場所。
「出番」は、「わたしにもできる事がある」とあなたが周りに貢献できる場所。
皆さんは、そんな場所を持っていますか?
このふたつが揃って初めて、人間関係は豊かなものになります。
アドラー心理学では、「対人関係のゴールは共同体感覚である」と考えています。
自分が所属している集団や社会、あるいは会社や家族などの人間関係のなかに「居場所」と「出番」があると感じられること。
言い換えるなら「わたしはここにいていいんだ」という安心感と「わたしはこの仲間の助けになれる」と貢献感を得られる状態です。
それこそが共同体感覚であり、豊かな人間関係です。
さて、さきほどのミヤジマさんに話を戻しましょう。
このままじゃまずいと思ったミヤジマさんは、一人ひとりと面談をすることにしました。すると、20年近く勤めているベテランの女性が、
「業務フローにムダがある」
「いまのシフトの組み方だと休みを申請しづらい」
「会議のやり方を変えたほうがいい」
など、次々と改善点を挙げてくれたのです。でも、いざ「一緒にやりましょう」と声をかけると、「わたしは自信がないし、ムリです。できません」と言って、一歩を踏み出そうとはしませんでした。