
私たちは仕事でもプライベートでも、さまざまな人との付き合いに時間とエネルギーを使っている。しかし、それでも気持ちが通じ合わず、なかなか信頼関係を築くことができないこともあるだろう。あらゆる悩みが対人関係に起因すると考える「アドラー心理学」に基づいて、のべ3万人以上の「ムダな行動」を改善してきた佐藤悠希さんは、そんな付き合いを改善するには、心理的安全性が欠かせないと説く。佐藤さんの著書『不毛な時間をゼロにする』(サンマーク出版)から、人間関係を豊かにする考え方を紹介する。
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お互いを尊敬、尊重する
「不毛な付き合いをゼロにする」と聞くと、人間関係をバッサリ切り捨ててしまうようなイメージを持たれるかもしれません。
もちろん、そんなことはなく、あくまで「お互いを尊敬、尊重し、ヨコの関係を保つ」ことが大切です、すべてはそのための土台づくりなのです。
40代の男性会社員、ミヤジマさんのケースです。
ミヤジマさんは、人に対しても事業に対しても熱い想いを持った方です。
東京の本社で総務の仕事に従事していましたが、ジョブローテーションの一環で地方のグループ会社の工場に出向になりました。
着任当初、ミヤジマさんは「この工場を改革するぞ!」と意気込んで、社内改善のプロジェクトをスタート。工場をよくしようと思う一心で、ひとり意気込んでいたのですが……。
その熱い想いとは裏腹に、現場のベテラン社員たちには、どこか白けた雰囲気が漂っていました。
「自分はこの工場のことを思って必死に働こうとしている。なのに、その恩恵を受けるはずのみんなが、なぜこんなに他人事のような接し方なんだろう……」
肩をブンブン振り回していたミヤジマさんは、出鼻をくじかれてしまいました。
それもそのはず。現場のベテラン社員にしてみれば、東京からやってきた「よそ者」に、長年培ってきた自分たちのやり方を否定されたように感じたのです。