
トヨタに忖度する日本メディア
たった一人の感想でしかないが、仮にこのような同業者の口コミが広がれば、この先は楽観できない。
bZ3の発売当初は大変な人気だと報じられた。ただし、このクルマは、電池も主要部品もほとんどがBYDによるもので、はっきり言って、トヨタのクルマではない。データを見ると、昨年通年の純粋なEV(BEV)に限った(つまりガソリン車やPHVは入っていない)車種別販売ランキングではかろうじて29位に入ったが、24年12月にはトップ30から落ちている。ちなみに、トヨタが鳴り物入りで発売したbz4Xはほぼ売れていない。
24年通年のBEV販売1位は、テスラのモデルYだが、2位と3位を含め、ベスト10のうち5つはBYDのクルマだった。ベスト30には、トヨタのbZ3が前述のとおりかろうじて29位に入ったのみ。日本との差は歴然である。
こういう話をすると、必ず出てくるのが、トヨタが25年3月に発売したSUVの EV「bZ3X」がヒットしているという話だ。そういう報道は私も読んだ。
しかし、よく見ると、EVやPHVを含む新エネルギー車の中のSUV部門に限って見て、しかも競合ひしめく中国のメーカーを除いた外資系だけの4月販売ランキングで「トップクラス」に躍り出たというのが正確なところだ。無理やりトップを演出する市場の区切り方である。トヨタに忖度する日本メディアらしい。
しかも、bZ3Xは合弁相手の広州汽車集団と共同開発した。同社はEVブランド「AION」を擁し、まともなEVをつくれる。電池はもちろんBYD。運転支援機能も中国新興のモメンタのものを使った。トヨタは何をつくったのだろうか。
トヨタは、さらに、「bZ7」という新型車を投入する予定だが、こちらは、通信機器大手のファーウェイが開発したコックピットの採用を大々的に発表した。トヨタのEVブランド力がないので、「ファーウェイのクルマです」と中国の消費者にアピールせざるを得ないのだ。
ガソリン車のエンジンに相当する電池も、モーターなどを含むほとんどの部品も中国メーカーに頼り、コックピットも中国企業頼み。自動運転も中国新興企業のものを使う。全ては中国の有力メーカーがつくっているから安心ですよと言わない限り売れない状況になってしまった。
それが今の日本のBEVの実力である。
そして、BEVだけでなく、PHVでも、日本メーカーはBYDなどの中国メーカーに技術力で完全に敗北している。
つまり、今後伸びが期待できる分野で何も良いニュースがないのだ。
しかし、実は、本当の苦境はこれから始まる。
これからの自動車業界の競争は、EVをつくれるかとか、航続距離がどれくらいかとか、加速性能がどれくらいかという段階を通り過ぎてしまった。