スマホとEVの融合という夢が復活

 そう考えたのが、シャオミである。スマホメーカーとして中国で米アップルに次ぐ2位、世界市場でもアップルと韓国のサムスンに次ぐ3位のシャオミが、24年、EVの自社製造に乗り出した背景には、こうした考え方がある。シャオミの出したSU7は昨年12月に中国のBEV市場でなんと5位に入った。驚きである。シャオミは、クルマ以外にも、多種類の家電製品を出し、シャオミファンの推し活というほどの顧客の忠誠度を高めることに成功している。消費者の生活全般をターゲットにする戦略によって、今後、BYD、テスラ2強の競争に食い込む潜在性を秘めている。

 EVのスマホ化と言えば、少し前までは、アップルの専売特許だったが、自動運転車の開発を断念したことで、その野望は潰えた。

 一方、世界のスマホ市場でサムスンに次ぐ2位、中国市場ではダントツだった中国の通信機器大手のファーウェイは、19年以降の米国制裁により、スマホ事業がほぼ壊滅した。これにより、ファーウェイも狙っていたスマホとEVの融合という夢がやはり消えたかに見えたが、ここにきて、スマホの世界でも復活を遂げつつある。そして、ファーウェイの新たなEV戦略は、ある意味最も高度なものと言っても良いかもしれない。

 ファーウェイは、スマホ・タブレット・車載機器など異なるデバイス間でシームレスな連携が可能となるOS、ハーモニーを開発した。自らはクルマをつくらず、ハーモニーOSによる車載機器やシステムを自動車メーカーに提供している。また、自動運転システムもそのOS上で動くようにした上で、テスラ並みのものを提供している。インテル・インサイドという言葉が一世を風靡したことがあったが、今や、ファーウェイ・インサイドと謳うEVが勢力を伸ばす。これにより、クルマと家電、さらにはPCやタブレットも同じOS上で動かせるということは、それらの機器をシームレスに使うことができる(アプリを開かずに連続的に使用できる。例えば、車中で見ていた映画の続きを異なるアプリを開くことなく家のテレビをオンにしただけで見られる)ため、自然とファーウェイ製のスマホ、家電、PCなどの購買につながり、またスマホの通信契約も継続される。また、EVのシステムに関連する機器・部品などを販売できる。

 こうした競争に参入する他の企業は、全ての機器やシステムを自前で揃えることは事実上不可能だから、異分野のプレイヤーが協力することで分野機能統合型の競争に参入するしかない。

 製造業の競争の仕方としては、異次元に入ったということなのではないだろうか。

次のページ 米中に後れを取る日本メーカー