古賀茂明氏
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 6月16日にカナダで行われた日米首脳会談で、トランプ関税などについての協議はまとまらなかった。25%の自動車関税の行方も全く予測できない。

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 自動車産業は日本経済を支える大黒柱だ。関連部門を合わせた就業人口は500万人を超え、日本の輸出の約2割を占める米国向けのうち自動車関連はその約3割を占める。

 そこに25%というトランプ関税がかけられ、2025年5月には、車両(完成車)も自動車部品も輸出は金額ベースで大きく減少。今後もかなりの減少は避けられない。

 このままでは、日本の自動車メーカーは、米国への生産移転をさらに進めざるを得ない。日本経済への大打撃は必至だ。

 世界第2の自動車市場米国で苦境にある日本メーカーだが、世界一の市場中国では、米国以上の試練に見舞われている。

 しかし、依然として、日本では、日本メーカーが中国で巻き返しに転じたというような「大本営発表」記事が目につく。

 そこで、現状をおさらいしておくことから始めたい。

 日本の自動車メーカーの中国市場でのシェアは低下の一途だ。24年の日系大手3社(トヨタ、日産、ホンダ)の新車販売の合計は330万台で21年から3割も減少した。日本車シェアは同期間に20.6%から11.2%へと半減に近い落ち込みである。

 原因は、中国で販売が伸びているEVとPHVのいずれにおいても、販売台数で米テスラと中国メーカーに桁違いの完敗を喫したことだ。

 私は、6月初めに中国を訪問した。その際、杭州のモーターショーを視察したが、BYD、ファーウェイ(自社生産ではないが、後述する「ファーウェイ・インサイド」の企業のクルマが同じブースに集まって展示するという形態だった)、シャオミ、ジーリー、シャオペンなどのブースには多くの人が集まっていたのに対して、レクサス(トヨタ)、日産、ホンダなどの日本メーカーのブースでは、客がほとんどいない。

 杭州市内では、さほどの数ではないが、時折トヨタのEV、bZ3が走っていた。上海ではほとんど見かけなかったのに、杭州では全てタクシーだが、少しは目にするのである。だが、同行した中国人の友人は、「トヨタのEVの評判は今ひとつですよ」と冷たい。

 たまたま乗ったタクシーがbZ3だったので、タクシー運転手に質問すると、運転手の話が止まらなくなった。通訳してくれる友人によると、クルマとして走る機能はともかく、走行距離がカタログの記載よりもかなり短いことや、ナビを含めて車載システムが全く使い物にならず、非常に不満だという。室内装備もシャビーだと言う。同業者も同じ意見だそうだ。「こんなクルマをつくった人間は非常識だ」という厳しい言葉まで出た。

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