9回までノーヒットノーランに抑えたにもかかわらず、打線の“ムエンゴ”で快挙を逃したのが、オリックス時代の金子千尋だ。

 2014年5月31日の巨人戦、金子は3四球を許した以外は、8回までに11三振を奪うなど、巨人打線を無安打無失点に抑える。

 9回も先頭の片岡治大を二ゴロに打ち取ったあと、坂本勇人にこの日4つ目の四球を与えたものの、松本哲也の犠打で2死二塁、阿部慎之助の中前に抜けるかという飛球をショート・安達了一がジャンプして好捕。見事9回までをノーヒットに抑え切った。

 だが、味方打線も、2日前に祖父・原貢さんを亡くした菅野智之の「天国で見ているじいちゃんのために」という気迫の投球の前に、8回まで8安打を放ちながら、あと一打が出ない。

 金子が史上79人目90度目の快挙を達成するには、9回裏に自軍が得点できるかいかんにかかっていた。

「金子のためにも」とテンションを上げたオリックス打線は、先頭の安達が遊撃内野安打で出塁。伊藤光の犠打で1死二塁と一打サヨナラのチャンスをつくった。

 そして、金子の代打・駿太が敬遠され、原拓也の四球などで2死満塁とあと一歩まで攻め立てたが、ヘルマンが右飛に倒れ、スリーアウト。この瞬間、金子の個人記録は幻と消え、試合も延長12回、4番手・馬原孝浩が亀井善行に決勝ソロを被弾、0対1で敗れた。

「ノーヒットだったのは知っていましたが、最後まで0対0でいっていたので、そちらに気持ちがいくことなく、最後まで投げられました」という金子は「9回裏にサヨナラなら記録で、それはそれでうれしいけど、僕の使命はチームに勝ちをつけること。それができなかったので、ノーヒットへのコメントはできません」と勝利に貢献できなかったことに無念の表情だった。

 最終的にノーヒットノーランこそ達成したものの、「あと1球」で完全試合を逃したのが、巨人時代の杉内俊哉だ。

 2012年5月30日の楽天戦、杉内俊哉は3回までに7三振を奪うなど、8回まで1人も走者を許さない。2対0で迎えた9回も、西村弥が二ゴロ、銀次は三振でたちまち2死。1994年の巨人・槙原寛己以来史上16人目のパーフェクトまで「あと1人」となった。

次のページ 微妙な判定でパーフェクト逃す