投手では近本ほどの目玉選手は不在と見られるが、動向に注目が集まりそうなのが柳裕也(中日)だ。2016年のドラフト1位で入団し、2019年と2021年には11勝をマークするなど先発の一角として活躍。過去2年間は4勝にとどまり、少し成績を落としているが、規定投球回数も過去に4度クリアしており、先発として試合を作る能力は高い。現在は右肩のコンディション不良で二軍調整が続いているが、今シーズンもここまで4試合に先発して1勝1敗ながら全て5回以上を投げ切り、防御率も0.72と安定した投球を見せている。過去の例を見ても先発としてイニングを稼げる投手は高い評価を受けるケースが多い。柳は宮崎県生まれで、高校は横浜高校でプレーしていることを考えると、FA権を行使するとなればゆかりのあるソフトバンク、DeNAなどが狙う可能性も高そうだ。
投手でもう一人面白い存在となりそうなのが山岡泰輔(オリックス)だ。柳と同じ2016年のドラフト1位で東京ガスから入団。二桁勝利は2019年の一度だけだが(13勝)、入団から3年連続で規定投球回数をクリアしている。2023年からはリリーフでも結果を残すなど、あらゆる場面で実績を残してきたのはプラス要因だ。今シーズンは違法のオンラインカジノに課金していたことが発覚して出遅れた影響もあってか、ここまで中継ぎで9試合に登板して1勝、2ホールド、防御率4.15と目立った成績を残すことはできてないが、イニングを上回る奪三振を記録するなど投げているボールについてはまだまだ力がある。貴重な万能タイプの投手だけに、FA市場に出れば争奪戦となることは必至だろう。
近年はFA権を取得する前に複数年契約を結んで残留するケースも多く、吉川尚輝(巨人)もオフに3年契約を結んでいる。過去の例を見ても、FA権取得前後での活躍はその後の大型契約に繋がるケースも多いだけに、今回名前を挙げた選手は残りのシーズンで何とかアピールしてもらいたいところだ。
(文・西尾典文)
こちらの記事もおすすめ 山田哲人はなぜ急激に衰えたのか 早熟の「天才」が若手のときに見せていた「危うい兆候」