卒業生の多くが一流と呼ばれる大学に入り、その後官僚になったり、大企業に勤めたり、医師や弁護士などの国家試験に挑戦する機会を得たりしていた。そういう高校だからこそ、加害者となった男の子の失うものの大きさに大人たちは同情したのではないか。「教育とは……」と教育論を装ってはいるが、女の子が失った学ぶ機会のことは考えてないのではないか。性被害者が失った未来と、男の子が失う未来を天秤にかけているのではないか。性被害なんてたいしたことないと、思っているのではないか。モンモンとした。
そしてその種のモンモンを、もしかしたら私はこの国に生きている限り、一生晴らすことはできないのではないか……とずっとモンモンとし続けている。
5月、サッカーの日本代表に佐野海舟選手が選ばれた。私はサッカーには興味はないのだけれど、やはりちょっと不意を突かれるような思いになる。
佐野選手は昨年7月に不同意性交等容疑で逮捕されている。逮捕後に本人が「間違いありません」と容疑を認めたと報じられたが、その後、不起訴処分になった。
日本サッカー協会は佐野選手の選出理由を3つあげた。「相手の方に対して話し合いと謝罪をしたと確認した」こと、「本人が深く反省している」こと、「不起訴処分という判断が警察によって下された」ことだ。そして、日本代表の森保一監督はこう語った。
「彼はミスを犯したと言えるかもしれないですが、(略)私は指導者として向き合う中で、ミスを犯した選手をそのまま社会から葬り去るのか、サッカー界から葬り去るのかということに関しては、再チャレンジする道を、家族として与えるほうが良いのではないか」
わかりにくいことだけれど、性加害の場合、加害者が行為を認めた場合でも不起訴になるケースは珍しくない。性被害は、被害者が事件後に背負う負担があまりにも大きいため、本人の意思を尊重し、検察が不起訴にすることがあるからだ。また、示談が成立している場合にも不起訴になるケースは多い。そして、恐らく佐野選手の場合も、相手の女性との間で話し合いと謝罪が行われているということは、示談が成立したと考えられる。