
日本テレビアナウンサーとして活躍しながら、社内で新規事業としてアパレルブランド「Audire」を立ち上げた郡司恭子さん(34)。5月、AERA編集部が立ち上げたイベント「アエラボカフェby AERA Woman」の初回ゲストとして登壇したのにあわせ、自らのキャリア観について語ってくれた。
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――アナウンサーだけでなく、アパレルブランド「Audire(アウディーレ)」のブランドディレクターとしても活躍しています。仕事のことを話すなかで、「アナウンサー人格」という言葉を使っていたことが印象的でした。
日テレ用語かもしれないのですが、「プロデューサー人格で考える」というように、よく使う言い回しなんです(笑)。私の場合はアナウンサーであり、新規事業部員でもあります。自分自身は一人の人間ですが、どちらも働き方がまったく違います。2倍おもしろくなったというのは言い過ぎかもしれませんが、新しい自分が生まれていく感覚がありました。
――「アナウンサーの自分」「Audireディレクターとしての自分」「プライベートの自分」など、自分の役割を切り替えたりはしますか。
私の場合はオンオフのスイッチというより、「レバーをどこに設定するのか」という感覚が近いんです。事業運営をしているときは組織・マネジメントのレバーをぐっと上げるけれど、そのメンバーと飲みに行くときは少し下げるようなイメージです。でも、以前はスイッチ型でアナウンサーとしての自分とプライベートの自分を切り替えていましたね。Audireの企画書を書き始めたころから、少しずつ変化していった気がします。
普段からインプットの時間・アウトプットの時間を、時間割のように分けていて、Audireを始めてから自然とそういう働き方が身につきました。

新規事業に対し、周囲からの厳しい視線も
――そうした働き方はご自身に合っていると思いますか。
自分としてはすごく楽です。というのも、私にとってAudireはビジネスとはいえ、アナウンサーと切り離された領域ではないんです。情報を伝えるという仕事とプロダクトを届けるという仕事はどちらも同じ「伝える」「メッセンジャー」という領域です。なので、スイッチをパチパチ切り替える感覚ではないですね。
――確かにメッセンジャーとしての役割は同じですね。日本テレビは会社を休職して大学院進学する方もいたりと、多様な働き方が認められているイメージがあります。ただ、Audireはアパレルという新領域です。そこで事業を始めることへの逆風はありませんでしたか。
今思うとビジネス目線で正しくジャッジされていただけなんですけど……生々しく言うと、「ビジネスのプロではないアナウンサーが好奇心だけで事業を始めたと思われているという空気感」を感じたことがあります(笑)。自分のなかでも新規事業を立ち上げることは初めての経験だったので、逆風があるという先入観のせいでそう思いすぎてしまったのかもしれません。
――前例のないことなので、大変でしたよね。そうした厳しい視線はいつ頃から変わり始めましたか。
正直なことを言うと、2024年頃からですね。
――最近まで厳しいなかにいたんですか。
そうなんです(笑)。折れずにチームメートと一緒に1年目、2年目と数字を積み重ねていきました。2年目の結果が計画を上回ったことで社内の空気が変わり、2025年度のIR情報と新卒採用ページにAudireを取り上げていただいたのですが、それを見たときにこれまでの取り組みを肯定された気持ちになりました。