
「本が売れない」と言われながらも、文学作品展示即売会「文学フリマ」が大人気だ。赤裸々な思いを乗せられ、読者との直接のコミュニケーションがとれるなど、自分で作って自分で売ることの醍醐味がある。これからも広がりそうだ。AERA 2025年6月9日号より。





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「私もこの店、よく行きます」
「わー、ほんとですか? じゃあ、見ていってくださいー」
ここは5月11日に東京ビッグサイトで開かれた文学作品展示即売会「文学フリマ」の会場。例えばお気に入りのカフェへの愛を綴ったZINEをはさみ、作った人と買う人のそんな会話が弾んでいた。
この日の文学フリマは過去最高の2700店以上が出店。食、街、旅など、ありとあらゆるテーマのエッセイや、自作の詩、短歌、俳句などを紹介する詩歌集、はたまた小説、ハウツー本など、マクロからミクロまで、どんな嗜好にも対応してくれそうな各種ZINEが会場いっぱいに並ぶ。
ZINEとはマガジンの略で、1930年代、アメリカのSF愛好家たちが作った印刷物がルーツといわれる。日本では個人が作る手作り本が、こう呼ばれることが多い。
同人誌との違いは、その線引きをめぐって論争が起こることもあるが、結局これといった区別はなし。ここでは同人誌やミニコミなどの読み物もまとめてZINEと呼ぶことにする。
海外のZINEを集めた書店や、個人的に印刷物を作る人は以前から存在したが、日本ではコロナ禍前後から作り手が増え始め、ZINE人口が拡大。ZINEを並べる独立系の書店が増えたほか、文学フリマのような即売会も各地で開催され、ZINEの世界が日々拡大してきた。
自分にもできるかも?
ここで知りたくなるのが、どんな人がZINEを作っているのか。文学フリマの会場で、賑わっているブースの主に話を聞いてみた。