
セ・リーグの最多勝争いが、興味深い展開になっている。
【写真】球史に残るリリーフのみで最多勝を獲得したのはこの投手
村上頌樹(阪神)と山崎伊織(巨人)が6勝をあげてトップだが、5勝で追いかける投手が4人。床田寛樹(広島)、東克樹(DeNA)、松葉貴大(中日)、そしてセットアッパーの大勢(巨人)だ(5月28日終了時)。先発陣の中にリリーバーが1人名前を連ねているが、このような現象がなぜ起きているのか。セ・リーグ球団のスコアラーが分析する。
「球界全体が『投高打低』で、得点がなかなか入らず、試合終盤まで接戦にもつれる展開が目立ちます。大勢は守護神・R.マルティネスにつなぐ役割ですが、リードしている場面だけでなく、同点の場面で投げる機会が多い。好投で試合の流れを引き寄せ、直後に味方の攻撃で勝ち越して白星がついている。大勢が凄いのは先発の白星を一度も消してないことです。抑えとは違う難しさがあると思いますが、高いパフォーマンスを発揮しているのはさすがですね」
入団以来、抑えを務めてきた大勢だが、今年はR.マルティネスの加入により、セットアッパーへ配置転換。役割は変わったが、抜群の安定感は変わらない。右のサイドから150キロを軽く超える直球、スライダー、フォークで三振奪取能力が高い。今季は21試合登板で5勝0敗15ホールド、防御率1.25をマーク。対戦する他球団の選手は「直球はR.マルティネスより速く感じますね。フォークも140キロ近いので、途中まで直球と判別がつかない。攻略が非常に難しい投手です」と脱帽する。
本来なら序盤から得点を重ねて先発投手に白星がつく展開が理想だが、巨人打線は不動の4番・岡本和真が左肘靭帯損傷で長期離脱し、迫力不足が否めない。ローゲームの展開で試合終盤に登板する大勢の重要性が高まっている。5月24日のヤクルト戦では、2-2の8回に登板すると、北村拓己を三ゴロ、オスナを左飛、山田哲人を中飛とわずか8球で3者凡退に抑えた。その裏に泉口友汰の2点適時二塁打で勝ち越し、5勝目が転がり込んだ。
巨人を取材するテレビ関係者は、「優勝争いに食い込んでいるのは大勢の働きが大きい。試合の分岐点となる場面で相手打線を抑えることでチームが勢いづく。1週間に2、3度のペースで登板機会があるので、今後ホールドと共に白星を積み重ねれば最多勝獲得が非現実的とは言えません」と話す。