
小中高と大分の公立校で学び、米・ハーバード大学、ジュリアード音楽院を卒業・修了したバイオリニストの廣津留すみれさん(31)。その活動は国内外での演奏だけにとどまらず、大学の教壇に立ったり、情報番組のコメンテーターを務めたりと、幅広い。「才女」のひと言では片付けられない廣津留さんに、人間関係から教育やキャリアのことまで、さまざまな悩みや疑問を投げかけていくAERA DIGITAL連載。今回は、歌手とのコラボレーションも多い廣津留さんに、ボーカルに合わせて演奏するときに意識していることや歌とのセッションの魅力について語ってもらった。
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Q. テレビで放送されていた近藤真彦さんたちとのコラボセッション、パワフルでとても魅力的でした。ボーカルと合わせてバイオリンを弾くときは、どういったことを心がけているのでしょうか? 大学時代も歌とセッションした経験はありますか?
A. 歌手の方と掛け合いのような演奏をするときは、バランスに気をつけていますね。ここはボーカルが目立つポイントだから私はあまり前に出ないほうがいい、逆にちょっと間があるようなところではバイオリンの音を前に出したほうがいいなという感じで調整しながら、ステージ全体のことも意識して演奏するように心がけています。
こうした調整が自然とできるようになったのは、ハーバード大学時代に課外活動として、ミュージカルのオーケストラピットで演奏する機会が多かったからではないかなと思います。バイオリンにチェロ、ドラム、ピアノなど6〜10人ぐらいのアンサンブルで、曲によってはバイオリンソロとステージ上の役者との掛け合いがあるものも。ステージで何が起きているのかを常に見ながら、役者の演技や歌に合わせて演奏していく。もちろん指揮者やディレクターが合図を出してくれることもあるけれど、結局は自分で見て合わせて弾かないとうまくいきません。ショーによってもテンポは毎回変わりますし、自分だけが上手に弾ければいいわけではないんですよね。
そうやってまわりにアンテナを張りながらバイオリンを弾く経験は大事だったなと思います。キャストやクリエイティブの動きも含めて全体を見るので、その後オペラのプロデューサーを務めることにもつながっていきましたし、いまでもこういった歌とのセッションのときにすごく役立っています。