好きなミュージカルの演奏に自ら参加し、役者との掛け合いも経験した(撮影/吉松伸太郎)

 私は昔からミュージカルが好きで、いつもテレビでトニー賞の授賞式も見ていました。高校生のときに、トニー賞の複数部門を受賞した作品『ネクスト・トゥ・ノーマル』が全米で上演されると知り、どうしても生のステージを見たくて西海岸へ見に行ったことがあるんです。その後、ハーバードに入学したら、その思い出深い演目を学生主体で上演すると聞き、これは弾かなくちゃ!と思い学生プロデューサーに「ピットに入れてください!」と突然連絡しました。楽曲もすごくいいんですよ。私が練習のときに無意識に歌を口ずさんでいたら、キャストから「なんで歌詞まで知っているの? 中身を知ってから弾くなんてすごいね」と驚かれました(笑)。大学ではミュージカルピットでの演奏を経験した人が少ないこともあって、それ以降重宝され、公演のたびによく声をかけてもらうようになりました。

 歌とのセッションは楽器のみの演奏と比べて、メッセージがとてもクリア。歌には歌詞という言葉が付くので、演奏する側も聴いている側も共通の理解やイメージを共有することができます。解釈がずれることがあまりないですよね。特にマッチさんの曲の場合は誰もが知っていて、イメージも共通認識できていました。楽器のみのセッションの場合、間の取り方などは演奏者どうしの阿吽の呼吸もありますが、曲についてはそれぞれの解釈で表現し、メッセージもオーディエンスの想像にお任せする部分が大きいです。私はどちらも好きで、それぞれに面白さがあると思います。

構成/岩本恵美 衣装協力/BEAMS

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