好調な打撃で打線を引っ張る西武のルーキー・渡部聖弥(日刊スポーツ)
好調な打撃で打線を引っ張る西武のルーキー・渡部聖弥(日刊スポーツ)

「投手力武器に僅差で勝つ“落合野球”と重なる」

 パ・リーグ他球団のコーチは「西武は元々弱いチームではない」と前置きした上で、続ける。

「今まで外野の3枠のレギュラーが固まっていなかったが、中堅に西川愛也、左翼にルーキーの渡部聖弥が固定できるようになったことが大きいと思います。戦い方を見ると、先制点を奪って先行逃げ切りのスタンスが徹底している。派手さはないけど、投手力を武器に僅差で白星を積み重ねていく戦いぶりは、落合博満監督が指揮をふるった時代の強い中日と重なります。先発陣だけでなく、リリーバーも山田、甲斐野央、ウィンゲンター、守護神の平良海馬と能力の高い投手がそろっている。対戦していて最も戦いにくいチームです」

 昨年最下位に沈んだチームがリーグ制覇まで駆け上がるのは容易ではないが、今年はチャンスがある。優勝候補のソフトバンクがスタートダッシュに失敗してもたついている。過去には2年連続最下位に低迷していたオリックスが2021年にリーグ優勝を飾ったケースがある。

「あの時のオリックスは、打線で吉田正尚(現レッドソックス)に加え、伸び悩んでいた杉本裕太郎が32本塁打でタイトル獲得と大ブレークしましたが、安定した戦いができたのは山本由伸(ドジャース)、宮城大弥という左右のエースが稼働したからです。山本は18勝をマークして投手タイトルを総ナメにする活躍をし、高卒2年目だった宮城も自己最多の13勝と期待以上のパフォーマンスを見せた。シーズンを通じて5連敗が一度もなかったのは、白星を計算できる先発が2枚いたからです」(オリックスを取材するスポーツ紙記者)

躍進した21年オリックスと同じ左右のエース

 今年の西武にも頼もしい左右のダブルエースがいる。今井達也と隅田知一郎だ。右のエース今井は8試合登板で4勝1敗、防御率0.59。かつては制球難で苦しんでいたが、スポーツトレーナー鴻江寿治氏の「鴻江スポーツアカデミー」で体の使い方をつかんだことで球質が変わり、相手を圧倒する投球を見せている。開幕から61イニングを投げてわずか4失点。本塁打や犠打などによる失点はあるが、まだ一度も適時打を許していない。64奪三振はリーグ最多だ。

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