
セクハラ被害に対して多くの企業では適切な対応を取る窓口がなく、加害者が問題を自覚していないなど改善すべき課題は大きい。性暴力被害当時者でつくる団体の代表は、経営層の意識改革が重要と提言する。AERA 2025年5月26日号より。
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2017年に性暴力被害当事者らでつくる一般社団法人「Spring(スプリング)」が設立された当初から活動を続ける共同代表の早乙女祥子(しょうこ)さんは、職場での性被害をなくすために経営層が特に理解すべき三つのポイントを挙げる。
(1)性的同意の取り方を知る
(2)セクハラや性暴力の定義を正しく理解する
(3)被害者の心理や実態を学ぶ
ボトムアップは難しい
「性的な行為には必ず相手の同意が必要です。同意のない性的な行為はすべて性暴力にあたります。そして、性被害は通常の暴力と違い、恥ずかしさや恐怖によって声を上げにくい。この3点を経営層が理解しなければ、どんなに制度を整えても機能しません」
その上で、組織のリーダーには、具体的に次の四つの対策を実施することが求められると話す。
「1点目は、企業ポリシーの明確化と徹底です。職場でのハラスメントは一切許容しないという企業ポリシーを明確にし、社内に周知徹底することです。海外では『ゼロトレランス』という考え方が定着していて、反した者には厳正な処分を行っています」
2点目は従業員への教育と研修の実施。多くの加害者は、自分の言動が問題だと認識していない。そのため、全従業員を対象に、具体的な事例を交えた研修を実施し、性的同意やジェンダーバイアス、第三者介入の仕方について学ぶ機会を設ける。
3点目は、職場の環境改善。被害者が相談しやすい環境を整えるため、ハラスメントの相談窓口を設置し機能させる。
「4点目は法整備の推進です。国や自治体がハラスメント防止に関する法律を強化し、企業の責任を明確化する。違反企業にはペナルティーを科す仕組みをつくることも重要です」
Springでは近く、「組織のトップが性的同意について認識を深めるべき」とする声明を発表する予定だ。早乙女さんは言う。