古舘佑太郎さん/撮影・松永卓也(写真映像部)

挫折感もなく「無理かも」

――2からTHE 2に至る中でも、バンドは大きく様変わりしていきましたよね。それはThe SALOVERSのときにあった後悔が解消されたから、次に行けたということだったんですか?

 確かに具体的な話をすると、セールスとか動員とかではThe SALOVERSを超えていたし、ようやく2回目にして「これは」みたいな時期もありました。でもそれも、そこからさらにもう一個上に行くってなるとなかなか行ききれなくて。そこでちょっとずつ悩みとか出てきて。昔だったらそこで腐ったり、「これでいいんだ」みたいな状態に行く可能性もありましたけど、2の時は後悔があったから「いや、ここで踏ん張るんだ」みたいな気持ちになって。だから手を替え品を替えっていう状態になっていったんですよ。だから、その頃からもしかしたら危うかったのかもしれない。

 でも当時は気づいていなかったんですけどね。ガス欠に気づくまで、僕はマジで、バンドでずっとやっていくと思ってた。「無理かも」と思ったときは自分でもびっくりしました。

――基本的には10代の頃からバンドしかやってこなかったわけですからね。それが「できない」と感じるというのはどういうものだったんですか? 挫折?

 でも不思議なもので、挫折感もなかったんですよ。だからヤバいと思ったというのもあるんです。「ちくしょう」とかも思わず、本当のガス欠。ふと肩の力が抜けた感じがあったんですよ。それが寂しかったんですけどね。

 僕は今までずっとミュージシャンとして自分はダメだって思っていたんです。満たされない、本当にどうしようもないやつだっていう思いがあったし、だからThe SALOVERSが終わったときは腐ったし、一応ボロボロになったんです。でも今回は「ふう」っていう感覚が初めてあって。これ、悪い意味で言いますけど、「振り返ってみたら結構胸張れるタイミングもあったな」みたいな。

――何くそ精神でずっとやってきたのに、「頑張ってきたじゃないか」と思えてしまった。バンドをやることがもはやコンプレックス云々の話ではなくなってしまったんですね。

 そうですね。

――だとすると、バンドをやっていく中で古舘さんが抱えていたモヤモヤはどこに行ってしまったんでしょう?

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