今季は1軍出場がない巨人の小林

 海野、嶺井、渡邉に加えて谷川原健太も入れたハイレベルな正捕手争いが期待されたが、甲斐の穴は簡単には埋められなかった。ベテランの嶺井は試合途中からマスクをかぶる機会が多いが、他球団のスコアラーはこう分析する。

「嶺井の配球は大胆なんですよ。DeNA時代から同じ球種を何球も続けたり、内角を果敢についたりする。でも、制球力に不安を抱える投手は甘いコースに入って痛打を食らうリスクがあるんですよね。試合のスタートから使ったほうが持ち味を出せる捕手だと思います」

人的補償で名前が出た小林

 接戦の試合終盤にマスクをかぶり、救援陣を引っ張る捕手――。ソフトバンクが必要としている存在に、当てはまるのが巨人の小林誠司だ。昨年は菅野智之(現オリオールズ)の登板した全試合でマスクをかぶり、復活劇に大きく貢献。だが、小林の価値は「菅野専用捕手」にとどまらない。試合中盤から途中出場し、好リードで投手陣の良さを引き出す。ブロッキング、キャッチングの能力も高い。

 前出のスポーツ紙記者は、「昨オフにFA移籍した甲斐の人的補償として小林を獲得するのではないかと推測されましたが、現有戦力を底上げして後継者を育てようという判断になりました。ただ、最下位に低迷している現在は緊急事態です。このまま浮上できない状況が続くなら、トレードで捕手の補強に動く可能性があります」と語る。

 小林は今年開幕からファーム暮らしが続き、1軍出場がない。巨人の捕手陣は甲斐が正常時先発出場し、大城卓三、岸田行倫が控えている。小林の現状は「4番手捕手」。若手で強肩が武器の山瀬慎之介が次世代の正捕手候補と目されている中、出場機会を得ることが難しい状況になっている。

 巨人の球団OBは「小林は現役引退後に指導者としても期待されています。ナインからの信頼も厚い選手ですが、野球人生を考えた時、他球団でプレーする経験をすることは大きな糧になると思います。巨人でこのままプレーしていても1軍で出場するのが難しい現状を考えると、トレードで必要としてくれる球団があるなら移籍してもう一花咲かせてほしい思いはあります」と期待を込める。

 3、4月は苦戦したソフトバンクだが、首位・オリックスに大差をつけられているわけではない。混戦模様のパ・リーグで、早期にチームを立て直せば浮上できる。思い切ったトレードで戦力補強を敢行するか、注目される。

(今川秀悟)

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