2023年11月、NPBの表彰式で並ぶ大山(左)と巨人・岡本和真

阪神の担当記者は「残留と聞いて驚いた」

 阪神を取材するスポーツ紙記者は「正直、巨人に移籍すると思いました」と振り返る。

「23年の日本一に貢献し、阪神に十分に恩返ししている。巨人のほうが阪神より契約条件が良かったと聞いていますし、新天地で新たなスタートを切るかなと。茨城出身ですしね。あと優しい性格なので巨人からオファーが来たら断り切れないとも考えました。『阪神残留』と聞いたときは正直驚きました」

 巨人と阪神は特別な関係のライバル球団だ。過去に、両球団の間でFA移籍した選手は1人もいない。現役時代に巨人と阪神の両球団でプレーした選手はこう語る。

「ファンの気質が全然違いますね。巨人から阪神にFA移籍しても、巨人ファンは正直そこまでブーイングを飛ばさないんじゃないかなと思います。でも、阪神ファンは熱量が違う。もし阪神から巨人にFA移籍したら、ブーイングだけでなく、過激なヤジも飛ぶでしょう。野球に集中するのが正直難しい。自分がFA権を取得しても、阪神から巨人に移籍するのは想像できないですね。甲子園に行くのすら怖くなってしまう。阪神ファンは味方だと心強いし大好きだけど、敵には回したくない。この気持ちを理解してくれる選手は多いと思います」

 タラレバの話になるが、大山が巨人に移籍したらどうなっていたか。今年はおそらくポイントゲッターの5番を託されるが、岡本がポスティング・システムを利用してメジャー挑戦となれば、4番を担うことになったかもしれない。だが、他球団から巨人にFA移籍した強打者で、活躍を続けられた選手は多くない。清原和博、広澤克実、村田修一はコンスタントに活躍できず、チームの戦力構想から外れる形で退団した。

 巨人で過去にプレーした選手は「大山君の阪神残留の決断は正解だったと思いますよ」と言う。

「まず、巨人にFA移籍したというだけで、他球団のファンからバッシングを受けます。年俸など待遇面で他球団に比べて良いことは間違いないですが、結果が出ないと選手層が厚いので外される。毎年のように外部から選手を補強しますし、常に競争の中で生き残らなければいけない。パ・リーグ球団へのFA移籍だったら意味合いが違ってきますけどね。大山君は繊細な性格だと聞いています。阪神残留か、巨人移籍か悩み抜いた上での決断なので後悔はないんじゃないですかね」

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