
大阪・関西万博を小中学生に楽しんでもらおうという大阪府の子ども無料招待事業が始まっている。事業に対しては、安全面での不安などから参加を見送る学校もあった。実際に万博会場を訪れていた教員に話を聞くと、不安の声が聞かれた。
【写真】人だらけ!地下鉄中央線の運行休止で夢洲駅で足止めされた利用客の様子
「こうなることを避けないといけませんが、避けようがないのも事実。それでも万博には行くという決断のようです」
こう複雑な表情で話してくれたのは、大阪府内の小学校のA先生。5月にも予定されている大阪・関西万博の社会見学の「下見」のため、数人の同僚とともに万博会場の最寄り駅である地下鉄・夢洲駅を視察していた。
A先生が記者に示してくれたのは、スマートフォンの画面。そこには、夢洲駅にアクセスする唯一の鉄道路線・地下鉄中央線が4月22日に車両故障で一時運転休止となったことを伝えるニュース記事が映し出されていた。中央線は午後9時半から約1時間、運転を見合わせたが、このため夢洲駅では4000人を超す来場者やスタッフが身動きがとれなくなり、大きな混乱となった。
「うちは地下鉄で学校と万博を往復する予定です。朝8時前には出発し、学校に夕方4時くらいには到着したい。次の日も授業があります。もし地下鉄が止まって児童たちが足止めを食らったらどう対応すればいいのか。心配でなりません」
とA先生は不安げに話す。その後、同僚の先生たちと夢洲駅で、ホームの大きさや幅を見ながら、
「3列で並ぶ? いや4列がいいか」
などと細かな打ち合わせをしていた。
A先生の心配は杞憂ではないだろう。この取材の後、地下鉄中央線は4月26日夜にも、全線が一時運転休止となった。
維新の市議から声がかかって「行くしかない」
A先生の学校では大阪府の万博子ども無料招待事業を利用して、万博への社会見学が決まった。万博への学校単位での無料招待については、安全面の不安や交通費負担などの理由から、否定的な意見が出ているが、これについてA先生はこう話した。
「うちの地元は維新が市議会の与党です。維新の市議から校長に『ぜひ万博の無料招待に』と何かの集まりで声がかかったようで、『行くしかない』ということです。しょうがありませんわ。万博の入場者数の目標をクリアするには、学校単位の動員が不可欠なんでしょう。なにか子どもたちが利用されているような気もしますが……」