阪神の守護神・岩崎優が投じた高めのストレートにフルスイングをかけるも、バットが空を切ると一瞬、表情を歪めて打席を外す。再び打席に戻ったのもつかの間、球審にタイムを要求してそのままベンチに下がり、代打と交代した。“異常”が発生したのは明らかだった。

 ここで相手のエラーにより同点に追いついたヤクルトだが、延長11回の末に惜敗して最下位に転落。試合後、髙津臣吾監督が「(コンディション不良の)再発ですね」と話したとおり、村上は翌18日に登録を抹消されてしまう。指揮官は「トレーナーさんも本人も、もういけると判断してのこれ(一軍昇格)なので、万全だったと思ってますけど」と説明していたものの、頼みの主砲が復帰から1日で姿を消す事態となった。

 18日の巨人との3連戦(神宮)初戦は序盤から相手に主導権を握られて完敗。逆に19日は5回まで3対0とリードしていながら逆転負けを喫し、12日のDeNA戦から5連敗。村上不在の間、代わりに四番を務めてきた“助っ人コンビ”のホセ・オスナは「ムネは最高のバッター。僕らには彼が必要だし、彼がいないのは確実に痛い」、サンタナも「僕らにとって大きな損失だ」と“村上ショック”の大きさを認める。ただし、主砲を欠いたからといって白旗を掲げるつもりはなかった。

「ムネ(村上)がいてもいなくても、勝つために全力を尽くすことに変わりはない。とにかく“闘い続ける”(キープ・ファイティング)、それが一番大事だ。彼が戻ってくるまでにできるだけ良い順位にしておきたいし、そのためにもキープ・ファイティングだよ」(オスナ)

「まずは1つ勝つ。勝たなきゃ連敗は止まらないからね。ピッチャーがしっかり投げて、野手はしっかり守って、点を取る。簡単なことじゃないが、そのために毎日、一生懸命に練習してるんだ。あきらめずに(ネバー・ギブアップ)みんながやるべきことをやれば、まだまだやり返せる」(サンタナ)

 とはいえこの時点で5連敗。シーズンは始まったばかりというものの、現在の一軍野手最年長で、過去に大型連敗を何度も経験してズルズルいってしまう怖さを知る正捕手の中村悠平は、危機感を募らせていた。

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