巨人時代の山口俊

 山口は巨人で先発の大黒柱として期待されたが、移籍1年目の17年はグラウンド外でトラブルを起こしてしまった。飲食店で泥酔中に右手の甲を負傷。その後に訪れた病院で、酒に酔って出入口の扉の損壊や男性警備員への暴行に及んだとして傷害と器物損壊の疑いで書類送検(不起訴処分)され、球団から出場停止処分と罰金、減俸処分を受けた。

 だが、19年には15勝4敗と自己最高の成績を残し、最多勝、最多奪三振(188)、最高勝率(.789)のタイトルを獲得。巨人はこの年、5年ぶりのリーグ優勝を果たしたが、山口の活躍なくして達成できなかった。この19年オフ、山口はポスティングシステムによってメジャーに挑戦、ブルージェイズに移籍した。

巨人、ソフトバンク優位に変化の流れ

 スポーツ紙デスクは、FAの移籍先で時代の流れを感じるという。

「かつては巨人の1強で、その後、豊富な資金力を持つソフトバンクも優位に立ちました。でも、昨年オフにロッテにFA移籍した石川柊太、23年オフに日本ハムにFA移籍した山崎福也は、巨人、ソフトバンクの誘いを断っています。今は金銭面よりプレーの環境面や契約年数、どのように能力を伸ばしてくれるかなどを重視する選手が増えていますね。伸び悩んでいる選手が環境を変えるという観点からFA移籍を決断するケースも増えています」

 球界の戦力バランスを大きく変えてきたFA移籍だけに、資金力だけでなく、移籍する選手に選ばれるような球団作りが重要になっている。

 (今川秀悟)

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