
今年はFAで移籍した選手の活躍が目立っている(データは4月8日終了時)。ソフトバンクから巨人にFA移籍した甲斐拓也はここまで全試合でスタメンマスクをかぶり、打率.375と打撃も好調。楽天からヤクルトにFA移籍した茂木栄五郎も、故障で離脱した村上宗隆の代役で三塁を守り、3割近い打率をマークしている。スタートダッシュに成功したオリックスは、投手では広島からFA移籍した九里亜蓮が2試合登板で1勝0敗、防御率1.93と好調な出だしを見せ、打者ではやはり広島からFA移籍2年目の西川龍馬が打率.459と絶好調だ。
【写真】中日移籍の決意を固めたが、土壇場で巨人に翻意したのはこの投手
昨オフのFA市場では、阪神の大山悠輔の獲得に巨人が動き、去就が注目された。大山は悩んだ末に阪神残留を決断。球界関係者は「巨人に移籍すると思ったので驚きました」という声を漏らした。野球人生の大きな岐路となるFA移籍では、土壇場で結論がひっくり返ることが珍しくない。
金本監督のラブコールで消えた巨人・糸井
16年オフに、オリックスから阪神にFA移籍した糸井嘉男もその一人だ。巨人はこの年のオフに大型補強を敢行。いずれもFA移籍で、先発右腕の山口俊をDeNAから、セットアッパー左腕の森福允彦をソフトバンクから、走攻守3拍子揃った外野手の陽岱鋼を日本ハムから獲得した。だが、最も欲しかった選手は糸井だったという。当時の巨人担当だったスポーツ紙記者が振り返る。
「16年の巨人はリーグ4位の519得点で、打線の補強とともに、固まらなかった中堅手のレギュラーを求めていました。チャンスメークとポイントゲッターの両方で稼働でき、守備力もある糸井の獲得に乗り出し、移籍が決まったと思いきや、阪神にとられました。当時の金本知憲監督が熱烈なラブコールを送ったことで状況が変わったようです。巨人は方針転換し、陽岱鋼の獲得に動きました」
糸井は阪神で6年間プレー。後半の20年以降は古傷の右膝痛に悩まされるなどで出場試合が減ったが、前半は主力として稼働した。一方で陽岱鋼は巨人と5年契約を結んだが、コンディション不良や故障の影響で規定打席に一度も到達できず21年限りで巨人を退団した。