
個人経営の町のお蕎麦屋さんが加入している「東京都麺類協同組合」によると、加入者数は約40年前の約4千軒から、約1千軒に減った。東京都内では、毎年75軒の町のお蕎麦屋さんが閉店している計算だ。町蕎麦の未来はどうなるのか。AERA 2025年4月14日号より。
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蕎麦屋業界を見ても、バブル前後から新たな試みで蕎麦屋の復権を狙う店も出てくるようになった。例えば、そば打ちの伝統を継承し、磨き上げようという高級手打ち蕎麦のブームとか。また逆に、そばつゆに豚肉やラー油を入れるなどしてこれまでの伝統に打ち勝とうという意気込みが見える反逆児系もいくつか登場している。
高級手打ちでは「翁」、反逆児系では「港屋」がエポックとされ、それぞれ翁系、港屋系と、インスパイアされた弟子たちがグループを形成している。さらに最近は、そば粉100%の十割蕎麦を、グルテンフリーの切り口でアピールすることで、海外でお客さんを集めているお蕎麦屋さんが増えている。
ただし、そもそもお蕎麦は盛大にすすってこそおいしいことから、どうしても出るのがズズズズ音。この食べるときに出る音がマナー違反とされる欧米人には、すすることすら慣れていないので蕎麦を食べるのが苦手との説もある。
とはいえドンマイ。今回あちこちの町のお蕎麦屋さんに外国人観光客の蕎麦屋での様子を聞いたところ、「最初はむずかしそうだけど、すぐにうまくすすって食べてます」という答えが多かった。
そば粉自体はフランス郷土料理のガレットなどで欧米でも馴染みがある食材。将来、抹茶並みに人気が爆発する日はあるかもしれない。
「小銭をポケットに入れてフラッと入れる気安さを大切にする一方、基本を守った丁寧な蕎麦作りが、これからの町のお蕎麦屋さんの武器になる」
そう考えているのは、神田尾張屋(東京都千代田区)のご主人で、日本麺類業団体連合会会長の田中秀樹さん(71)だ。
「何日も寝かせた返しや、そば粉の配分、食感、切り方など、各店ごとに作り上げた独特のお蕎麦のバリエーションを楽しんでもらいたいですね。同じ東京でも、東と西では味がずいぶん違うんです」
中華料理が「町中華」「ガチ中華」と注目されて、TBSの人気ホームドラマの舞台もやがて「幸楽」という中華料理店に。またうどんは北九州のソウルフードがファミレスチェーンに買収され、東京進出しただけで大きなニュースになった。
つぎの主役は、元祖外食産業のあなた、町のお蕎麦屋さんで決まりです。(ライター・福光恵)
※AERA 2025年4月14日号より抜粋