「5番・二塁」でスタメンに戻った5日のデーゲーム。2回裏無死二塁のチャンスで最初の打席に入り「今日こそはと思ってフルスイングしました」と、中日先発の左腕・松葉貴大が投じた2球目の変化球を叩くと、打球は満員のレフトスタンドに飛び込んだ。

 昨年10月3日以来のアーチはプロ野球史上46人目、球団では池山隆寛(現二軍監督)に次いで2人目の通算300号となり、ヤクルトは2点を先制。このリードを最後まで守り、引き分けを挟んで3連勝で勝率を5割に戻した。

 背番号23のユニフォームで巨人の内海哲也(現投手コーチ)から東京ドームでプロ初本塁打(2012年8月10日)を放ち「テレビで見ていた人からホームランを打ったのは自信になりますね。これからもドンドン行けたらと思います」と、まだあどけない表情で語ってから13年。現在はミスター・スワローズの象徴とも言われる1番を背負うキャプテンは、試合後のお立ち台で「まさか300本も打てると思ってなかったので。これはホント自分の実力だけではなくて、運もあったりご縁もあったり、ホントそういうのが積み重なって打てたと思うので、周りの方に感謝したいと思います」と、すっかり大人になった顔で喜びを口にした。

 続く6日のデーゲームでは、山田は3点を先制された直後の1回裏に今度は一気に試合を振り出しに戻す3ラン。神宮球場での本塁打に限れば、池山の記録を抜いて歴代最多となる通算168本目の一発に「そこに関しては素直に嬉しいです」と話したものの、チームは中日とのシーソーゲームを落として連勝はストップ。再び借金生活に逆戻りとなってしまった。

「良い当たりは続いている。結果としては出てないんで(打率.133)、来週(8日の阪神戦)からはそこも突き詰めていきたいなと思います。また頑張ります」

 2試合連続のアーチにも、山田は決して満足してはいない。打線では主砲の村上宗隆が上半身のコンディション不良により二軍調整中だが、東京ドームの開幕3連戦で計12失点と打ち込まれた救援陣が神宮に戻ってからはわずか1失点と踏ん張り、チームとして戦う態勢は整ってきた。今季のスローガンにもある「捲土重来」を目指し、キャプテン・テツトは言葉や存在感だけでなく、自らのバットで、プレーでチームを引っ張っていくつもりだ。

(文・菊田康彦)

菊田康彦/1966年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身。2004~08年『スカパーMLBライブ』、16~17年『スポナビライブMLB』出演。プロ野球は10年からヤクルトの取材を続けている。

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