歌いながら涙がとまらなくなることも

 ラッパーもしかり。日本にラップを持ち込んだと言われている、いとうせいこうさんと一緒にラジオでラップをやったときに、これがあまりに面白く、でもとっても難しくて今世では無理かな〜と思って「来世は絶対ラッパーになるぞ!」と心に決めたわけ。で、「ハワイのフラの名手の助産師で、子だくさん母さんのラッパーになる」という夢ができたわけです。

 ところがなんと45歳で双子を出産することになり、思いがけず「子だくさん母さん」が今世でかなってしまい、あら、来世まで待つ必要なかったわねとちょっとうれしくなりまして。

 さて、お待たせしました、ここでゴスペルに話は戻ります。

 ゴスペルは、かつてアフリカからアメリカに奴隷として強制的に連れてこられた黒人たちが、その苦しい日々を生き延びるために歌った神を賛美する歌。労働の歌が原点で、みんなで過酷な労働のリズムと歌を合わせて励まし合いながら歌った歌で、神に見守られているという喜びを爆発させるようなエネルギッシュな曲もあったり、ずーんと心に響く歌もあったり、歌いながら元気をもらい勇気づけられることもしばしば。ゴスペルは「バンプ」といって同じ歌詞を何度も繰り返して歌うのが特徴なのですが、歌っているうちにその歌詞の内容が自分の人生と重なって、だんだん自分の心も波打ってきて、歌いながら涙があふれて止まらなくなることもあるんです。

 ゴスペルを歌い始めた頃、キリスト教信者でもないのに「ジーザス! ガーッド!」とか歌ってる私ってどうなの? と思ったりしていたのに、英語で歌詞を覚えて繰り返し歌っているうちに思いがけず涙があふれてきて嗚咽するほどに泣いてしまう瞬間を経験するのです。その瞬間「え? なになにこれ? なんで泣いてる私?」と面食らってしまったのですが、先生によるとゴスペルを歌う人にはそんな瞬間が1度ならず2度3度と訪れるのは珍しくないのだとか。言われてみれば、YouTubeなどでゴスペルの動画を見ていると、みな抱き合って涙しながら歌っている姿をよく見かけます。あれは教会で歌っているからそうなるのだと思っていたら、実はそうではなく、ゴスペルという歌にそのような力があるのでは、ということに気づきました。

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