難関校を目指す小・中学生のための学習塾「サピックス」で30年以上にわたり講師を務める広野雅明さんも「点数や偏差値はあくまで結果。それよりも過程を見てほしい」と語る。
「子どもにとって小さな成功体験はとても重要です。一段一段上がっていく過程を褒めることが学びへのモチベーションになっていく。テストが返ってきたら、点数に右往左往せず、何ができるようになったのか、できていないところはどうつまずいているのかといった過程を見てあげてください」
さらに、どんなことでも「我が子に合っているか」を判断軸にしてほしいと言う。
■余裕ないと判断を誤る
「子育てに絶対的な解はありません。例えば、インターネットの掲示板などで辛辣(しんらつ)に書かれているような学校でも、実際に足を運んでみると素晴らしい場合もある。塾においても、実際に見て、我が子に合うかを判断することが重要だと思います。そして、正解は人によって違うので、別の子にとっては良くても、我が子にとっては必ずしもベストとは限らないということを理解しておいてほしいと思います」
たくさんの情報から判断できないという背景には、保護者に「余裕がなく、理想が高くなりすぎる状態」があるとママプロジェクトJapan代表の岩田かおりさんは言う。岩田さんは家庭教育に関する講座や母親向けのコミュニティーを運営する中で、多忙な日々の中でさらに子どもの勉強のことで悩んでいる保護者をたくさん見てきた。
「高学歴でバリバリ働いている方ほど『失敗したくない』『損をしたくない』という気持ちが強いように思います。たくさんの情報の中で理想がどんどん高くなり、現実とのギャップに苦しんでいる方もいらっしゃいます」
仕事では高い目標を持ち、失敗しないことが是とされているため、「そういう考え方になるのも無理はない」と岩田さん。
「一生懸命勉強し、就職活動も頑張り、必死で毎日働いているからこそ、子育ても同じ姿勢で向き合ってしまう。しかし、余裕がない時はよい判断ができないものです。車の運転も焦っている時は、道を間違えたりうっかりミスをしたりしがちです。大切なことは理想を下げて、まずは30分でもいいから自分の時間を確保して心の余裕を作ること! これが一番大切です」
(教育ライター・佐藤智)
※AERA 2023年4月24日号より抜粋