セ・リーグでは中日も小笠原慎之介(ナショナルズ)の穴埋めが課題となる。昨年は5勝11敗と大きく負け越したものの、チームトップの144回1/3を投げており、防御率も3.12と決して悪い数字ではなかった。4年続けて規定投球回数もクリアしていたというのも見事である。
代役の筆頭候補となりそうなのが新外国人選手とマラーだ。メジャーでは通算4勝ながら、アスレチックス時代の2023年には開幕投手を務めた実績もある。身長2メートルを超える長身で、球威は申し分ない。課題と見られていた制球もオープンでは19回を投げて2四球と安定したところを見せている。新外国人だけに過剰な期待はかけづらいが、この調子を維持できればある程度の成績を残せる可能性は高そうだ。
そして最も期待が大きいのがドラフト1位ルーキーの金丸夢斗。昨年春のリーグ戦で痛めた腰の状態を考慮してスロー調整が続いているが、体調さえ万全なら一軍でも十分に通用するだけの実力を秘めている。マラーや他の先発投手が調子が落ちてきた頃に一軍に昇格して、救世主となるということを期待したい。
巨人と優勝を争った阪神も青柳晃洋(フィリーズ傘下)が抜けたが、昨年は12試合の登板で2勝3敗という成績に終わっただけにそこまで大きな穴ではなく、充実した投手陣を考えると影響は軽微と言えそうだ。
パ・リーグではロッテが佐々木朗希(ドジャース)の穴埋めが必要だが、こちらもある程度見通しが立っている印象を受ける。まず大きいのがフリーエージェント(FA)でソフトバンクから加入した石川柊太だ。昨年は63回1/3の登板に終わったが、それ以前は層の厚いソフトバンクにあって4年連続で100イニング以上に登板しており実績は申し分ない。このキャンプ、オープン戦でも順調な調整が続いており、先発を任せられる可能性は高い。
新外国人選手のボスとサモンズが少し安定感を欠いているのは気がかりだが、他にも若手では田中晴也、中森俊介、ベテランでは石川歩、唐川侑己なども控えており、やりくりできるだけの人材は揃っているという印象だ。ドラフトで上位指名2人が野手だったのも、投手陣にある程度自信があったからだと言えるだろう。
こうしてまとめてみると、どの球団もメジャーで抜けた選手の穴を埋める候補は少なくないように見える。球団にとってはマイナスだが、他の選手にとっては大きなチャンスと言えるだけに、これを機にブレイクする選手が出てくることを期待したい。(文・西尾典文)
西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

