
厳しい状況が続いているローカル線を取り巻く環境。だが、復活を遂げた鉄道もある。茨城県の中央部、太平洋に面したひたちなか市を走る「ひたちなか海浜鉄道」の事例を紹介する。AERA 2025年3月24日号より。
【図表を見る】衝撃の数字! ローカル線の利用者減少がとまらない
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交通評論家で、亜細亜大学講師の佐藤信之さんは、ローカル線の復活には、「鉄道を観光リソース(資源)としてどう生かせるかという視点を持つことが必要」と話す。
「日本のローカル線は、車窓の風景自体が観光資源として意味があります。ローカル線を観光リソースとして活用していこうという姿勢が大切です」
ただ、地域の足としての役割が終わった鉄道に公費を投じるのは、今はなかなか認められない。そこで、国内外の旅行会社などに投資してもらい、付加価値をつけた観光列車などを走らせることで収益の足しとすることが必要と言う。
「また、住民が線路脇に花壇をつくったり、駅で旅客案内するなどの自発的な活動に対して自治体や国が支援する仕組みをつくることも大切です。ローカル線を自分たちの鉄道、つまり、マイレールだと自覚してもらうことで、みんなで鉄道を守り、育てることに繋がります」
復活している鉄道に共通するのは、自社だけで完結せず、地域の声を聞き、地域と一緒に取り組んでいることだ。
「市民協働、協力してやってきました」
と話すのは「ひたちなか海浜鉄道」社長の吉田千秋さん(60)だ。
同社の前身は、大正時代に開通した湊(みなと)線。戦後は茨城交通が運行してきたが、車の普及などで利用者が減少して赤字が累積し、会社は廃止を表明した。だが、沿線住民が存続運動を展開し、08年に第三セクター方式の新会社として新しいスタートを切った。その際、社長に就任したのが、吉田さんだった。富山県高岡市、射水市を走る第三セクター「万葉線」の経営改善に取り組んだ実績を買われ、公募を経て社長になった。