
乗客の声聞き黒字化
「鉄道業界の常識は、世間の非常識」
と吉田さん。日本の鉄道は線路を敷くにも多額のお金がかかり安全にも気を使わなければいけないので、「決めたダイヤで乗れ」というのが常識だという。
「一般企業であれば、お客様の声を聞くのは当然。鉄道会社の常識は、世間の非常識です」
心掛けたのが、「お客の声を聞くこと」。最終列車がもう少し遅ければ、あそこに駅があれば便利……。そうしたお客の声を聞き、利用しやすいダイヤに改正したり通学に便利な新駅を設置してきた。その結果、17年度には単年で黒字化を達成。コロナ禍で落ち込んだが、23年度の輸送人員は過去最多の116万8千人を記録した。
国営ひたち海浜公園までの「延伸」も、住民の「声」から実現した。公園に続く道路は、花のシーズンは深刻な渋滞が発生した。地元から、終点の阿字ケ浦(あじがうら)駅から公園までの約2キロを鉄道で運んではどうかという声が上がった。地元商工会議所が中心となり「延伸を実現する会」をつくるなど、官民一体で取り組んだ。
ひたちなか海浜鉄道の年間収入は約2億円。公園には年間200万人前後が訪れているので、1割が鉄道を利用すれば、往復1千円の運賃を支払うことになるので2億円の収入が見込める。「超優良企業になれる」と吉田さんは期待を込める。
「日本のローカル鉄道は赤字をなんとか縮小しながら経営しています。がんばればこんなに変わると見せたい」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2025年3月24日号より抜粋

