
今年、東京大学や京都大学など難関大学を突破した合格者たち。栄光をつかんだ生徒の素顔とともに、熾烈な受験競争を支えた親たちの献身から合格の秘訣をひもといてみる。
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國吉仁志さん 玉川学園高等部→東京大学 工学部
國吉さんが主に研究していたのは「人とロボットの協調作業」についてだ。
「人の協調においてロボットは、ただ人の指示を聞きその通りに動くだけではなく、人の行動からその意図をくみ、必要に応じてロボットからも人へコミュニケーションを行うことが重要となります。人とロボットが一緒に作業をする中で、双方向にコミュニケーションを行い、リアルタイムに反応するということを目指して研究しました」
研究ではパソコン上に一枚板による迷路の3D画像を作成。板上に置かれた球をゴールまでたどり着かせることができるかを検証するシステムをプログラミングした。人とロボットがそれぞれ板の縦の動きと横の動きを担い、互いに板を傾かせながら、ゴールを目指す。
「シミュレーションを重ねて、パターンを学ぶ機械学習によってロボットの行動を生成し、意思疎通が図れるよう開発しました。目標を共有し、人に対してロボットが自ら考えたことを提案することができるようになれば、一人ではできないことをロボットが手伝ってくれて実現できる。そんな協調作業を目指しています」
この研究は日本学生科学賞で入選、情報処理学会でも賞を取るなど、高く評価された。
加えて、國吉さんは自律移動型ロボットの研究も続けてきた。坂道や壁、段差などさまざまな障害を乗り越えて被災者を見つけ出し、スタート地点に戻ってくる。自律移動型ロボットの競技会「ロボカップ・ジュニア」の「レスキューメイズ」部門を目指しての研究だ。
「まったく操作をせずに移動する完全自律走行のロボットです。プログラミングはもちろんですが、ロボットの機体も自分ではんだ付けして製作しました」
父も母も兄も数学が得意という理系一家。國吉さんも幼いころから数字に親しみ、小学校1、2年生時にはプログラム関数電卓でゲームを作ったり、5歳上の兄と一緒に米マサチューセッツ工科大学のメディアラボが無償で公開するプログラミング言語をいじったりしていた。当時好きだった本が、数字や数学の魅力を面白おかしく教えてくれる『数の悪魔』。250ページ超の分厚い本だったが、夢中で読んでいた。