
「生徒を褒めるように変わっていた」
原田氏の指導を受け、プロ野球の世界でプレーしたOBは、「今回の事件の詳細が分からないので、その点はコメントできませんが」と前置きした上でこう話した。
「とにかく熱い人です。監督というより教育者に近い感じですね。野球もそうですし、勉強などでやるべきことをやらなかったときや、考えずに無計画で行動していたときは怒鳴られました。私も、何度も頭をはたかれたことがありましたよ。時代が違うかもしれないですけど、そのときは自分に非があるなと思ったので納得できたし、周りの選手も同じ感覚だったと思います」
このOBは「納得できた」というが、やはり「何度も頭をはたかれた」のは時代にかかわらず問題だろう。一方、このOBは、原田氏が野球の指導法に関しては、時代の先を見据えていたとも話す。
「今は球数制限など選手を守るルールが色々整備されていますが、原田監督は20年以上前から選手の体の成長度合いを見て、無理に投げさせたりしませんでした。あと、ベンチに入れない選手たちの様子を気に掛けていたのが印象的でした。『平安はファミリーだ。ここで3年間頑張ったことに胸を張ろう』と声を掛けていました」
別の野球部OBは、原田監督の部員への接し方が変化して驚いたことがあったという。
「僕らがプレーしていた25年くらい前は、練習のときに原田監督の怒鳴り声が響くのが日常の風景でした。でも、何年か前に見たら、生徒との距離感が全く違ったんですよ。怒鳴ることは怒鳴るんですけど、『今の最高だよ!』って褒めたりして。昔は考えられなかった。怒ると子供が委縮するので、指導法も色々試行錯誤していたんじゃないですかね。だから今回の事件を聞いた時は正直驚きました」
首都圏の高校の野球部で20年以上監督を務めた60代の元指導者は、複雑な表情を浮かべる。
「今の子供たちは怒られることに慣れていないので、接し方が難しい部分が正直あります。暴力は絶対に許されませんが、生徒に何度注意しても聞かなかったときは、私も手が出そうになったことがあります。言葉で訴えても響かないなら、痛みを感じさせて意識を変えてほしいという気持ちが、潜在的にあるのかもしれない。指導者も考え方を改めないといけないと、強く思います」