
産休・育休などの両立支援策が充実し、女性が働き続けることができる環境が整った。だが、家事・育児に追われるばかりで仕事に時間を割けず、キャリアを諦める女性は少なくない。その原因はどこにあるのか。AERA 2025年3月10日号より。
【図表を見る】いつの時代も働く女性の家事・子育ての負担は大きいママ
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家事の負担を50:50にできれば、女性が満足いくキャリアを重ねることができるのか。
子育て支援に詳しい京都大学大学院の柴田悠教授はこう話す。
「男性が家事・子育てをしたくても、長時間労働を強いられたら、早く帰れません。共働きが主流にはなったものの、旧来型の働き方をしている限り、性別役割分業意識から抜け出せず、働く女性の家事・子育ての負担は大きいままでしょう」
なかなか脱却できない長時間労働。女性活躍など働きやすい職場作りに向けた事業を展開している「21世紀職業財団」の主任研究員の山谷真名さんは、「夫=働く」というイメージを持つ人は多く、その意識が障壁になるケースがあると指摘する。
「大学で非常勤講師をしていますが、若い方でも男性は『稼がなきゃ』という意識がとても強いと感じます。稼いで養うのが第一で、家事・子育ては『可能な範囲で』であり、働き方を変えられないと感じています」
そんな状況の中、欠かせないのは、何より上司の意識だ。「夫の上司こそ変わるべきです」と話すのは、ジェンダーに詳しい福島大学の前川直哉准教授だ。
上司と妻の間で板挟み
「日本の育児休業制度自体は、世界的にみても充実しているのに、十分に使われていません。男性が育休を取ることを想定していない時代錯誤な上司が変わらなければ、夫も変われません。上司と妻との間で、板挟みになっている夫も多いのではないかと思います。一方、会社や上司を言い訳にして、家事から逃げている夫もいます。会社や上司が変われば、そういう夫も言い訳できなくなります」
男性自身とその男性上司の意識改革が求められる……と言われて久しいが、いま、ひとつの追い風が吹いているという。京大の柴田教授は言う。
「法改正することで、働き方のルールチェンジができます」