
現在、労働基準法で残業代は25%割り増しに設定されている(ちなみに欧米は50%割り増しが基本だ)。つまり、経営者は新たな人を雇うより、体力のある男性社員に残業させた方が安いと合理的に判断する。その結果、家のことは妻に任せることになってしまっているわけだが、柴田教授は、「来年、労働基準法が改正の方向で進むと私は見ています。厚生労働省の研究会で、残業割増賃金率も検討材料に挙がっています」と説明する。
意識改革に法改正。その結果、長時間労働が是正されれば、何が起きるのか。
「仕事は1時間当たりの生産性で評価されるようになると思います。効率よく両立する女性が評価され、女性の賃金の上昇につながるでしょう。男女で賃金格差があるから、男性が残業して、女性が定時で帰ってワンオペ育児をしたほうが、生活費を稼ぐには『コスパがいい』となってしまう現状も打破できるでしょう」(柴田教授)
女性が自由にのびのびとキャリアを重ねるためには、それぞれの夫が働き方を見直し、家事・育児を本当の意味で分担できるかが要となる時代だ。前出の山谷さんは、こう言う。
「何を大事にするのか夫婦で理想を話し合い、仕事でも家事でも、ここは頑張る、ここは頑張らない等の『自分たちの軸』を作っておくとよいのではないでしょうか」
家庭内で高めるダイバーシティー。それが男女ともに働きやすく活躍できる社会につながる。(編集部・井上有紀子)
※AERA 2025年3月10日号より抜粋

