
スーツ姿で子どもの送迎をする父親はすっかり街に溶け込み、若い世代を中心に、子育てを積極的に担う男性も増えている。「主夫」も珍しくないし、女性たちも子育て中でも海外出張をこなしたり、管理職に就いたり。結婚はもちろん、出産を経ても女性が働き続けることができる環境と価値観は、間違いなく広がりつつある。だが──。
内閣府の「令和2年版男女共同参画白書」によると、1996年は、女性の家事・育児・介護時間は週平均3時間34分。一方の男性はたった24分で圧倒的な差がある。だが、2016年になっても、女性は週平均3時間28分に対し、男性はわずか44分にとどまる。現役世代の女性の7割が働くいまも、女性は男性の5倍の家事をしているという現実があるのだ。
顕在化する“夫格差”
さらに、AERAが今年2月に行ったアンケートでは、仕事のチャンスを失ったり、共働きなのにワンオペ状態で疲弊しているという女性たちの声が多数届いた。
「(周囲を見渡すと)保育園の送迎から寝かしつけまでほぼ一人でやっているなど、時間の余裕がない状態の女性が多い。受験でも学校調べも説明会への付き添いも入試当日の送迎、お弁当作り、なんでもかんでも母親の仕事」(東京都・会社員・46歳・女性)
「夫は海外出張の日程を、決まってから言う。私がもし出張に行くならば、保育園の送迎や子どもの晩御飯まで、いくつもの調整をしなければならないのに。その調整がつかなくて、海外出張のチャンスを逃したことがある」(東京都・会社員・44歳・女性)
寄せられた声から浮かぶのは、冒頭の女性が15年前に経験したことから、何ら進歩していない現実だ。東京都内で働く会社員の女性(45)はこう話す。
「勤務先の育児支援制度はかなり整っています。同僚の中には3人の子育てをしながらフルタイムで働き、海外出張にも行く女性がいるくらいです。その一方で、出産後はずっと時短勤務でほぼワンオペで子育てをしている女性もいます。後者は、自身のキャリアが満足に積めないことに不満を感じている人が多い気がします」