「可能な範囲」の両立
女性活躍など働きやすい職場作りに向けた事業を展開している「21世紀職業財団」の主任研究員の山谷真名さんは、こう指摘する。
「女性は無理をしてでもお迎えに行くなど、子育てと仕事を両立しなければならないという気持ちがあるように思います。ただ、男性は『可能な範囲で両立』していると、私たちからは受け取れます」
同財団の調べでも、「1時間以上家事・育児をしている」と答えた夫は60.2%だったが、「夫が1時間以上家事・育児をしている」と答えた妻は42.9%で大きなギャップがあったという。
「子育てをしている男性に集まってもらってインタビューしたら、平日は全く子育てしていない人ばかりで衝撃を受けたことがあります。自分は育児をしっかりしていると思っている夫は多いのだと思います」(山谷さん)
このズレを象徴するのが、朝、保育園に子どもを送るのが夫で夕方に迎えに行くのが妻というケースだ。
「家事・育児の分担は一見すると『平等』ですが、実は『不平等』です」(同)
夕方に迎えに行くことが決まっていたら、妻は夕方までしか仕事ができず、マミートラックに陥る一因になる。山谷さんは、週2、3日は男性が迎えに行って、自宅で子どものお世話をすることを勧めている。毎日子どもが寝た後に帰っているなら、週に2日は早く帰り、3日は遅くまで仕事をするなどメリハリを付ける働き方もアリだという。
さらに、男性のズレが見えやすいのは、日常のこまごまとした家事だ。洗濯なら洗う、干す、畳む、は見えているかもしれないが、洗剤の補充をしたり、洗面所のタオルを交換して洗濯機に入れたりするといった家事が見えない夫は多いという。
山谷さんらがインタビュー調査で聞いた解決策はこうだ。
「まず夫に見える家事・育児をしてもらい、夫が取りこぼした見えない家事を妻がフォローする。それでようやく家事と子育ての分担が半々になるでしょう」
(編集部・井上有紀子)
※AERA 2025年3月10日号より抜粋

