
キャリアを重ね、管理職に就く女性が増えた。両立支援策の充実によって、出産後も女性が働き続けることができる環境も整った。にもかかわらず、キャリアを諦める女性は後を絶たない。その原因は、会社ではなく、家庭内にあった。AERA 2025年3月10日号より。
【図表を見る】いつの時代も男性は低い 仕事と家庭の「両立」志向
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神奈川県の主婦の女性(48)は15年前、子どもを授かり、産休・育休を取った。夫は女性に仕事を頑張ってほしいと願っていた。だが、「食洗機を使うのは手抜き」と平気で言う人だった。
「夫の母は専業主婦で料理上手。とても素敵なお母さんです。夫は、家事は手をかけなきゃいけないという『呪い』にかかっていて、解けないんだと思います」
その姿勢は、子どもが生まれてからも変わらなかった。なかなか寝ない子で、自分は1時間睡眠もざら。夫は子育てをしたいようだったが、常に会社優先で手伝いは望めない。育休明けの自分は、どんな状況に突っ込んでいくんだろう。戦場に行くような気持ちで、職場復帰した。
ある日、夫にキレた
朝は子どもを保育園に送り、夕方までに大急ぎで仕事を終わらせたらダッシュでお迎え。子どもの発熱で仕事を休むことがあったから、自分の体調不良を理由に休まないようにしていたら、風邪をこじらせて肺炎になった。でも、夫は相変わらず忙しく、食洗機を使うことも良しとしない。時短勤務で給料が3分の2になったこともあり、「何のために働いているんだろう」と気持ちはどんどん落ちた。そして、ある日、夫にブチ切れた。
「私は出ていきたい。育児のベテランの保育士さんと再婚したらいいんじゃないかな」
夫は驚いた様子だったが、その後も状況は変わらず、女性は子どもが4歳の時に退職する道を選んだ。子どもは中学生になったものの、自身の体調の変化もあり、もう再就職は諦めているという。「結局、女が割を食うんです」。そうつぶやいた言葉に実感がこもる。
この女性が退職せざるを得なかった時から、10年以上が過ぎた。世の中は確実に変化を遂げている。
産休・育休などの両立支援策が充実し、パパ育休も珍しくはなくなった。復職後の女性がキャリアを重ねられなくなる「マミートラック」に陥らないようサポートしたり、子どもの急な発熱による早退もフォローしたりできる職場も増えてきた。