打者としての能力も高い西純矢

「打撃センスが並外れている」

「打撃練習を普段行っていないにもかかわらず、高橋奎二やエスコバーの剛速球に反応して外野の頭を越える打球を打っている。センスが並外れているし、打者1本で勝負したらどんな成績を残すのか見たい思いがあります」(スポーツ紙デスク)

 投手としてなかなか殻を破れない中、球団外からは「野手転向」を期待する声が少なくない。高校時代から見てきたアマチュア野球のライターは「西は野手として成功できる可能性を秘めている」と強調する。

「150キロを超える直球をはじき返し、変化球への対応能力が高い。球を遠くへ飛ばす技術も持ち合わせています。投高打低の状況で2ケタ勝利を挙げる投手は各球団にいますが、打率3割、20本塁打以上マークできる選手は球界で一握りです。彼はこの数字をクリアできる素材です」

 これまでも投手としてくすぶっていたため野手に転向して、球界を代表する外野手として大成功した糸井嘉男(日本ハムオリックス阪神)のようなケースがある。ただ、阪神の球団OBは「そんな甘い世界ではない」と強調する。

「投手から野手に転向するとなれば、打つだけでなく守備や走塁も基礎から学ぶ必要がある。現実的に考えると外野手で勝負することになるでしょう。ファームで1、2年は徹底的に鍛える必要があります。本人にそれだけの覚悟があるのか。年齢的な問題もあります」

 糸井が野手に転向したのは大卒3年目。25歳だった。当時の日本ハムの関係者は「朝から夜までバットを振り込んで、守備と走塁も必死に勉強していた。体が強いから耐えられたのだと思います。身体能力が高くても、土台を構築しなければ野手として成功できない。大変な世界だなと感じましたね」と振り返る。糸井は野手転向後、首位打者や盗塁王のタイトルを獲得。外野手としてゴールデングラブ賞を7度も受賞している。

 球界を代表するリードオフマンとして活躍した石井琢朗(現DeNA野手コーチ)も投手として入団した。高卒1年目にプロ初勝利を挙げたが、3年目オフの21歳で投手としての限界を感じて野手に転向。遊撃や三塁を守り、通算2432安打をマーク、盗塁王も4度獲得した。

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