スプリングトレーニングで投球するロサンゼルス・ドジャースの佐々木朗希=2025年2月13日(写真:AP/アフロ)
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 ドジャースに入団した佐々木朗希選手。現地ではどう評価されているのか。在米ジャーナリストが解説する。AERA 2025年2月24日号より。

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 オフシーズンの最大の話題は、佐々木朗希をめぐる争奪戦だった。大谷翔平の渡米以後、メジャーリーグ関係者が最も注目していた日本人選手は佐々木だった。23歳にして最速165キロを誇り、日本プロ野球史上最年少で完全試合を達成した逸材。不規則に曲がって落ちるフォークボールは「世界最高の球」と評する関係者もいるほどで、三振を量産できる可能性がある。1月下旬に発表されたMLB公式サイトの若手有望株ランキングでも1位に選ばれた。

 佐々木はドジャース入団会見で「選手としていちばん成長できる場所」を選んだと語った。スポーツメディア「ジ・アスレチック」によると、獲得を目指す球団に「日本での最終年に球速が落ちた理由」を説明するよう課題を出したという。資質は文句のつけようのない佐々木だが、まだまだ欠点もある。速球やスライダーのコントロールと質(回転や変化)には改善の余地がある。けがや体調不良にも悩まされた。

 ドジャースは投手育成に定評があり、最新のデータ解析技術と充実したサポート体制を持つ。また、ロサンゼルスの温暖で雨の少ない気候は、体調管理がしやすい。それにドジャースは、佐々木を長期的視野で育てる戦力的な余裕がある。レギュラーシーズンで投手に無理をさせる必要もない。大谷やムーキー・ベッツなどスター選手が多いチーム環境も、佐々木にとってプレッシャーを和らげる要素となるだろう。

「ずるい」ほどの補強

 佐々木の加入に、ドジャースファンは歓喜する一方で、他球団のファンからは「さらに強くなるなんてずるい」との声も上がっている。大方の予想通りだったこともあり、「出来レースだったのでは」との疑念さえ囁かれた(これは本人も代理人も否定している)。

 今オフのドジャースは、優勝メンバーを維持しつつ、サイ・ヤング賞2度受賞のブレイク・スネル、オールスター級のリリーフ投手カービー・イエーツ、タナー・スコットも補強。野手では、長打力のあるマイケル・コンフォルト、走力と守備に定評のあるキム・ヘソンを加えた。

 圧倒的な戦力強化に、ライバル球団のファンからは「悪の帝国」と揶揄されるほどだ。しかし、ドジャースの成功の裏には、選手が「ここでプレーしたい」と望む環境づくりと、無駄のない効率的な補強を両立させてきた経営陣の努力がある。そのビジネスモデルは、多くの関係者から球団経営のお手本として評価されている。

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