自分の価値を知りたい
いっぽうで、転職サイトに登録する新社会人が増えた背景にはこんな理由もあるようだ。
「『転職市場での自分の価値を知る』ために、転職サイトを使う新社会人が増えました」
転職サイトに登録すると、企業から「法人営業、予定年収400万~600万円」といった求人情報が発信される。それを見れば、自分が他の企業からどう評価されているかの目安がわかる。転職エージェントのキャリアアドバイザーに相談すれば、現在の環境や、将来の可能性を客観的に分析してもらえるというメリットもある。
こうした「情報収集」を目的に、大学卒業と同時に転職サイトに登録する若者は、「現在働いている企業規模や知名度に関係なく増えている」という。
桜井さんは言う。
「彼らは、近い将来、転職することを前提に就職した『転職ネイティブ世代』といえるでしょう」
成長したいから「転職」
dodaが22年7月~23年6月の1年間に転職した人を対象に行った調査によると、20代で最も多い転職の理由は、「人間関係が悪い/うまくいかない」(12.6%)だった(単一回答)。30~50代と比較して、2~3倍ほど高い割合だという。
複数回答では、「給与が低い・昇給が見込めない」が35.2%、「人間関係が悪い/うまくいかない」が25.9%。3番目に多いのは「社員を育てる環境がない」の23.5%で、前年の14位から大きく順位を上げた。
「転職の質が変化しているのを感じます。これまでは、『職場にフィットしない』というネガティブな理由ばかりでしたが、今は『職場で成長したい』というポジティブな転職が増えている」
転職のイメージがよい理由
転職が収入アップにつながるケースが多いことも、若者の転職に対するイメージをよくしている。19年度上期の20代の転職前と転職後の平均年収は373万円で変わらなかったが、24年度上期は396万円から414万円にアップした(doda調べ)。
「深刻な労働力不足を背景に、仕事の経験の浅い20代でも転職すると昇給する傾向があるのです」
企業は、経験値の低い若者に対して、「柔軟性とキャッチアップする意欲」に期待して採用を決めることが多い。桜井さんは、新社会人の転職希望者に、こうアドバイスする。
「まったく異なる業界に転職するのであれば、これまでの経験から活かせるスキルがないかを整理したうえで、自身でどんな勉強をしてきたのか、新たな仕事に対する意欲を具体的に説明することが大切です」