仕事が好きで充実している。なのに、どこか遠慮してしまうのは「仕事と子育てを両立し、管理職になる女性」が"生き方の規範"かのような雰囲気のせいだ(写真:写真映像部)
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 社会全体が女性の活躍を推進し、企業の採用活動では“結婚・出産後も両立可能”などといった訴求が目立つ。そういった中、結婚・出産せず働き続けて管理職になった女性は肩身が狭く、子育てしながら管理職になる事例に苦しむワーママもいる。AERA 2025年2月24日号より。

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東京都内で働く女性(45)は数年前、勤務先で組織改革を進めるためのチームに入ったことがある。

 各部署から独身者や子育て中の人など年齢も性別も経歴も様々なメンバーが集まり、「働きやすい会社」にするために定期的に話しあった。意味のある議論があったと思う一方で、今ふと思い返すと、発言するときに時々「私はロールモデルではないですが」と枕詞をつけていたと感じる。

「私は独身で時間を自由に使えるので、『女性活躍』と言われなくても活躍したければできる」との思いがあり、「そんな私が発言するためにはエクスキューズ(言い訳)が必要」との気持ちからだった。

 一生懸命に仕事をしてきたし、積み重ねてきたキャリアに自信もある。でも「両立」がもてはやされる今、独身であるがゆえに、どこか遠慮してしまう自分がいたという。

 周囲の視線や雰囲気から思わずとった行動だが、AERAが昨年12月に実施した「独身」をテーマにしたアンケートにも、岡山県で公務員として働く女性(47)から「ひとりだと楽でしょうとか、仕事をしていると、どれだけ頑張っても独り身だからできるんだろうと思われているところがある」という声が寄せられた。

 著書に『等身大の定年後 お金・働き方・生きがい』があるジャーナリストで近畿大学教授(労働政策・ジェンダー論)の奥田祥子さんは、「育児と両立しながら管理職になる女性が以前に比べ増えて、独身の方が『私はロールモデルになれない』と話すようになった」と指摘する。

おくだ・しょうこ/近畿大学教授、ジャーナリスト。『シン・男がつらいよ』『「女性活躍」に翻弄される人びと』など著書多数(写真:本人提供)
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「均等法」成立から40年