大リーグでは2015年頃から「フライボール革命」が起こったと言われている。データ分析の結果、ホームランや長打になりやすいのは「バレルゾーン(打球速度158キロ以上、打球角度26〜30度)」を飛んでいく打球だとわかった。それで、「そういうフライボールを打ちやすいアッパースイングのほうがいい」となったわけだ。

 ただ私には、フライボール革命は結局、投手対打者の抑え方、打ち方の変化の繰り返しの中で出てきたものに見える。その意味では、アッパースイング自体がまったく新しい打ち方ではないこともあって、そこまで目新しいことではないのかもしれない。そもそも大リーグでは、昔からアッパースイングの打者が多かった。大リーグは低めに投げてゴロを打たせようとするため投手はストレートでも変化球でも基本的に低めに投げる。それに対応する一つの方法がアッパースイングと言える。

 そしてフライボール革命で、大リーグでは、ますますアッパースイングが打者の主流になった。そうしたら、ここ数年、投手がアッパースイングでは対応しにくい高めのストレート(フォーシーム)を投げて打者を抑えるようになってきた。

 その投手の変化に対応するために、最近の大リーグの打者は、高めのストレートを「レベルスイング」で打つようになってきた。つまり、アッパースイングとレベルスイングを高低によって使い分けようとしている。こういう打ち方をアメリカの打撃理論では、投球の軌道の角度にスイング軌道の角度を合わせる「VAA(Vertical approach angle)スイング」と言うそうだ。しかし、スイングの軌道を瞬時に変えるのは、やはり難しい技術なのだろう。大リーグの打者は、まだ高めのストレートにうまく対応できていないように見える。
 

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