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プロ野球では「4番=最強打者」「2番=小技の名手」といった固定観念が根強い。しかし、現役中に14度のリーグ優勝、11度の日本一に輝き「優勝請負人」と呼ばれる工藤公康さんは、監督時代に「7番打者こそが試合の分岐点になる」と考え、打順を柔軟に組み替えた。データを駆使し、試合ごとに最適なオーダーを組むことで「投手が嫌がる打線」を作るのが狙いだった。さらに、固定観念を打ち破る、新たな野球の見方とは? 工藤さんの最新著作『数字じゃ、野球はわからない』(朝日新聞出版)から、内容を一部抜粋・再編集して紹介する。
【写真】「数字じゃ、野球はわからない」と語る名将・工藤公康さん
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「2番打者最強説」は本当に正しいのか
日本では、昔からチームの強打者を「4番」に置く。プロ野球の監督でも「打順はまず4番打者から決める」という人が多いようだ。
私は監督時代、「7番打者」をポイントにしていた。データを分析してみたら、塁に走者がいる状況で最も多く打順が回ってくるのが7番とわかったからだ。7番打者や4番打者の固定にもこだわらなかった。私が重視したのは「打線のつながり」だ。だから相手投手との相性や打者の調子などによって、「日替わり」をいとわず頻繁に打順を入れ替えた。
常に考えていたのは「投手が嫌がる打線」だった。つまり、投手にプレッシャーのかかる打線。「こいつを抑えても、次はこいつかよ、その次もこいつかよ」と思うような打線にしたいと、毎試合考えていた。
大リーグでは、強打者を「2番」に置くチームが少なくない。近年、よく言われるようになった「2番打者最強説」だ。
昔から日本で2番と言えば、送りバントやヒットエンドランなど小技が得意な選手が入る打順と思われている。今はプロ野球の2番打者もあまり送りバントをしなくなっているし、強打者を2番に置くチームもある。たとえば、24年の横浜DeNAベイスターズは、オースティン選手(打率3割1分6厘、本塁打25本)か牧秀悟選手(打率2割9分4厘、本塁打23本)を2番に入れていた。ただ、2番=小技のイメージはいまだに強い。