先ほど述べたように、どうやって試合に勝つ確率を上げていくか、それを徹底的に考え、実行するのが監督の仕事だ。

 交流戦やオールスターゲーム後のローテーション変更については、先発投手たちに少なくとも1カ月前から伝えておいた。そうすることで、変更後のローテーションに合わせたコンディショニングを本人たちもしっかり考えて、準備することができるからだ。
 

大谷翔平以前の「二刀流」選手たち

 大谷選手がロサンゼルス・エンゼルス時代に残した「二刀流」の記録は「ベーブ・ルースの記録を更新」と話題になった。ベーブ・ルースは1914年から1935年まで活躍した大リーガーだ。つまり、大リーグでも二刀流で活躍した選手はベーブ・ルース以来、100年もいなかったということだ。

 日本のプロ野球に大谷選手以前、二刀流の選手がいなかったかというとそうではない。有名なのは、1936〜37年に首位打者と最優秀防御率のタイトルを獲得した阪神軍(大阪タイガース、現阪神タイガース)の景浦將さんだ。景浦さんは投手と主に三塁手を務めた。

 金田正一さんも通算38本塁打(うち代打で2本)とバッティングもよかったので、大谷選手のように二刀流で活躍できたかもしれない。しかし、金田さんは投手に専念した。

 他にもバッティングがよかったピッチャー、あるいはピッチングがよかったバッターはいたはずだが、目立った成績を残した選手は景浦さんくらいである。ただ、このように過去を遡れば、「二刀流」のポテンシャルを秘めた選手がいたということである。

(工藤公康)

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