ただ、6番が出塁しても7番でチャンスが潰れる場合もある。要するに、打順というのは監督の「願望」に過ぎないとも言える。毎試合、監督がイメージしている通りに打線がつながったら143勝できるだろうが、そんなことはありえない。
それだからこそシーズン中、何番にどれだけチャンスが回ってきたか、どの打順で終わりやすいのかといったデータをきちんと取っておくことが大事になる。
すると、たとえば「今の打線のつながりだと、9番が出塁したときの1番もしくは2番が大事だな」ということがわかったりする。そういうときに私は、2番に強打者を入れるようにした。
「野球は臨機応変でなくてはいけない」というのが私の根本的な考え方だ。2番打者最強説や4番打者最強説においても、やはり選手の調子や投手との相性などによって変えたほうがいいものだと思う。
先ほど「打順は監督の願望」と述べたが、データなどに基づいて臨機応変に打順を変えることは、やはり試合に勝つ確率を上げるための「準備」や「戦術」と呼ぶべきものだろう。
投手ローテーションも「臨機応変」が鍵
ちなみに、私は監督時代、打順と同じように、先発投手のローテーションも臨機応変を大事にしていた。
投手には得意、苦手がある。打者に対してだけでなく、球場にも得意、不得意がある。たとえば、同じチームが相手でも、ホーム球場かビジター球場かの違いだけで防御率や与四死球率がよくなったり悪くなったりする。
そういうデータも踏まえて、可能な限り得意なチーム、得意な球場で投げさせるようにローテーションを調整した。苦手なチーム、苦手な球場での登板をゼロにすることは難しいが、 たとえば、交流戦やオールスターゲームにともなう数日間の試合日程の空きを利用して、先発投手のローテーションを組み直していた。