選手にとって本当に必要なのは「自分の身体能力をどうしたら試合の中で活かせるか」という自分がプロ野球選手として活躍し続けるためのいわば方法論だ。投手なら「自分はこうやって投げれば打者を抑えられる」ということであり、打者なら「自分はこうやって打てば投手を打ち崩せる」ということだ。
そういう自分に合った方法論を選手が見つける手助けをするのが、監督やコーチの重要な役目になる。さらに選手が試合の中で、自信をもってその方法を実践できるかどうかも、監督やコーチのアドバイスの仕方にかかっている。
あるいは「試合で活躍し続けるためには、こういう身体能力を高めなければいけない」というアドバイスが必要な選手もいる。
要するに、大量のデータや便利なツールがある今の時代においては「どうやってそれを活かすか」を選手が考える以上に、監督やコーチが考え、説得力をもって選手に伝えていくことが求められている、ということだ。
「投高打低」の時代、その理由と面白さとは?
今のプロ野球は「投高打低」と言われている。たとえば、24年のパ・リーグの3割打者も福岡ソフトバンクホークスの近藤健介選手だけだった。14年には3割打者が7人いた。私が西武ライオンズで、防御率のタイトルを獲得した85年には、同年の三冠王の落合博満さんを筆頭に3割打者が10人いた。
ただし、「私が今、現役だったら、抑えるのが難しいだろうな」と思う好打者は近藤選手のほかに何人もいる。
一方で、24年シーズンの防御率1点台の先発投手は中日ドラゴンズの高橋宏斗選手(防御率1.38)を筆頭にセ・パ両リーグ合わせて6人もいた。私が1位だった85年の防御率2.76だと、かろうじてパ・リーグのベスト10に入るくらいだ。