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もちろん、長打があるかないか、選球眼がいいか悪いかといった傾向は、配球にも関係してくるが、その正確な数値までは必要ない。
「試合で使えるデータ」というのは、たとえば、各打者の打球方向のデータだ。これは守備シフトの参考になる。昔はスコアラーが目で見て手でまとめていたが、今はホークアイやトラックマンなど便利なツールが導入され、はるかに多くのデータを収集・解析できるようになっている。
野村克也が仕掛けた「データ革命」とは?
プロ野球において、初めてデータ活用を前面に出したのは、90年にヤクルトスワローズ(現東京ヤクルトスワローズ)の監督になったときに「ID(import data)野球」を提唱した野村克也さんだろう。野村さんは自分で取ったデータを分析して、たとえば、相手打者の好きなコース、嫌いなコースはもちろん、球種に山を張るのか、コースに山を張るのかなど、打者をタイプ分けして、正捕手だった古田敦也くんを中心に「配球」を指導した。相手投手についても同様に、状況別やカウント別にこういう球を投げてくるというタイプ分けなどをして、打者には「狙い打ち」を指導した。
その1990年代の「野村ID野球」で配球に使われた打者の傾向を示すデータと今のバッテリーが配球に使うデータとに、目立った違いはないはずだ。
前述したが、私は配球に関する多くのことを野村さんの本から学んだ。現役時代は先発で投げる日までに、対戦相手の直近3試合のビデオを見て、各打者の傾向(今の調子や打ってくるカウントや球種、打球方向など)を自分でデータ化していた。それにすでにデータ化してある前回までの自分との対戦時の傾向やスコアラーの分析データを加味して、事前に各打者への配球をシミュレーションした。そのうえで、試合中は打席ごとに打者の反応を見ながら、配球を組み立てていた。そういう中で最も参考になったのは、野村さんのデータを活用する配球理論だった。それは自分の監督時代も変わらなかった。