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現役中に14度のリーグ優勝、11度の日本一に輝き「優勝請負人」と呼ばれる工藤公康さん。福岡ソフトバンクホークスの監督としては、日本シリーズ制覇を5回も達成した。そんな工藤さんが今回語るのは、「投手有利」とされる昨今の野球事情。「フォークとチェンジアップが野球を変えた」と語る理由とはいったい何か? 工藤さんの最新著作『数字じゃ、野球はわからない』(朝日新聞出版)から、内容を一部抜粋・再編集して紹介する。
【写真】「数字じゃ、野球はわからない」と語る名将・工藤公康さん
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データだけじゃない! 試合で本当に使えるのは?
ひとくちにプロ野球の「データ」と言っても、さまざまな種類のデータがある。大きく分けると3種類になるだろうか。
一つは「選手の成績に関するデータ」だ。
昔からある選手の成績を表す数値としては、打者なら打率、本塁打、打点、投手なら勝利数、防御率、奪三振数といったところだ。今は選手の成績の評価指標に「OPS」「FIP(被本塁打率と与四死球率と奪三振率を組み合わせて計算する投手の指標)」「WAR(打撃、走塁、守備、投球を総合的に評価して選手の貢献度を表す指標)」などがある。
こうした選手の成績に関するデータは、主として、いわゆるチーム編成において必要な選手を判断する際や球団が選手の年俸を提示する際に使われる。私は監督時代、OPSやwOBA(得点貢献率)、四球率、出塁率を、打順を決めるときの参考にしていた。
二つ目は「試合で使えるデータ」だ。当たり前だが、打率にしてもOPSにしても、その打者が今日の試合、あるいはこの打席で打つ、というデータではない。あくまでも「過去の結果」を表す数値だから、たとえば「今日の試合の配球」にはほぼ関係ない。関係があるのは、たとえば「今の調子」を表すデータ(直近の3試合の打撃内容=芯に当てているか、詰まっているかや落ちる球種への反応の良し悪しなど)で、OPSがどんなに高い打者でも調子が悪ければ、抑えられる確率は高い。