なぜ、投高打低になったのか。今は昔よりも多くの投手がいろいろな変化球を投げるようになった。なかでも、フォークボールとチェンジアップは、昔は投げる投手があまりいなかった。今はフォークかチェンジアップを投げる投手が格段に多くなって、その両方を投げる投手も少なくない。

 しかも走者が出ても、フォークかチェンジアップで勝負をする。この落ちる球、特にフォークに今の打者が対応しきれていないのが、投高打低の一つの要因だろう。

 基本的に打者はフォークを狙わない。狙い打ちの確率はゼロではないが、かなり低い。単純に打つのが最も難しい球だからだ。その意味では、これからも対応できず、投高打低は続く可能性がある。

 ところで、投高打低の野球は面白くないのだろうか。

 野球ファンの中には、がんがんホームランを打ち合うような打撃戦が好きだという人は多いと思う。1対0のピリピリした投手戦が好きだというファンもいるだろうが、やはり8対7の「ルーズベルト・ゲーム」を面白いと感じるファンのほうが多数派だろう。

 私は、自分が投手ということもあって、投手がしっかり打者を抑える試合が好きだ。とりわけ勝つための野球においては、野球ファンからすると、もの足りないかもしれないが、守りがしっかりしていることが非常に大事だと考えている。

 勝つための野球とファンに喜んでもらえる野球は違うのかもしれない。

(工藤公康)

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