A氏や会社は、日本でオンラインカジノをすることが賭博罪にあたることは認識していたのだろうか。

 A氏がこう話す。

「正直、日本国内でオンラインカジノをやることが違法だとはわかっていました。でも海外の会社に日本の警察が捜査に来ることはないので」

 A氏がいた会社は、日本でカジノを広めるために、ネット広告に力を入れていたという。

「運営会社と広告の運用を委託している会社が、『豪華報酬』『スマホで簡単・安全にプレイ』などのうたい文句をつけて広告を出します。さらに、インフルエンサーらにPRの拡散を依頼することもありました」

 登録者数170万人超の有名なユーチューバーが、22年3月にオンラインカジノのサービス「ベラジョン」のアンバサダーに就任したと動画で報告し、ベラジョンを「日本で一番有名なオンラインカジノサイトです」と紹介している。

「安心・安全」はウソ!

 ベラジョンのサイトを見ると、トップページには、

「いつでも安心・安全・楽しい!」「登録1分&すぐに使えるボーナス進呈中」「ゲーム数4100超! 選ぶ楽しさMAⅩ★」

「スマホさえあればどこでもプレイできちゃう本格カジノ、それがベラジョン★日本語で遊べて、24時間日本語サポートもバッチリです!」

 と日本語で書かれており、オンラインカジノが違法ということは一言も触れていない。

日本人向けに作られた海外のオンラインカジノのホームページ。違法性を感じさせないポップなつくりになっている

 このように、オンラインカジノ会社の積極的なPR戦略にはまり、知らないうちに賭博行為に手を染める日本人はいる。

 大手のメディア関係の会社に勤める27歳の男性がこう打ち明ける。

「実は数万円程度、2022年に行われたサッカーW杯決勝の勝敗をオンラインカジノで賭けました。浅はかでした。著名なインフルエンサーがPRをしていたから、大丈夫だろうと。さすがに違法行為を宣伝しないだろうと思っていました」

 男性はW杯のほか、23年に行われたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)、24年のパリオリンピックにも数万円ずつ、計10万円余りを賭け、4、5万円儲けがあったという。

「昨年末からオンラインカジノをして警察に捕まった人が出始め、そこで止めました」

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多額の広告費をばら撒き、芸能人らがSNSなどでPRも